金利とは? — お金の「レンタル料」と日銀の役割

金利は、お金を借りるときに払う(貸すときに受け取る)レンタル料です。金利が高い時代は、借金のコストが重くなる一方、預けるだけで利息が増える。低い時代はその逆です。

レンタカーで考えるとわかりやすいです。1日3,000円で借りられる車と、1日1万円かかる車。料金が高ければ借りる人は減り、安ければ気軽に借りて出かける人が増えます。お金もまったく同じで、レンタル料である金利が上がれば企業も家計も借金を控え、下がれば借りて使うようになります。

この金利の水準を調節しているのが中央銀行——日本では日本銀行(日銀)です。日銀は「銀行の銀行」であり、お札の発行元であり、そして物価と景気の安定を任務とする経済の管制塔。政策金利の上げ下げこそ、その最強の操縦桿です。

日銀が直接動かすのは、銀行どうしが超短期でお金を融通し合うときの金利です。そこが動くと、住宅ローン金利、企業の借入金利、国債の利回り、そして預金金利へと、ドミノ倒しのように波及していきます。ニュースの「利上げ」がわたしたちの生活に届くのは、このドミノを通ってくるからです。

インフレとは? — デフレ・スタグフレーションとの違い

モノの値段が全体的に上がり続けるのがインフレ(インフレーション)、下がり続けるのがデフレ(デフレーション)です。日銀は「年2%くらいの緩やかなインフレ」を物価安定の目標にしています。適度なインフレは経済が元気に回っているサインだからです。

投資家にとって大事なのは、インフレ下では現金の価値が静かに目減りするという事実。年2%のインフレが10年続くと、100万円で買えるものは約82万円分に縮みます。20年なら約67万円分。「貯金は安全」は、インフレ時代には半分だけ正しい——これが「貯蓄から投資へ」と言われる根本の理由です。

もうひとつ覚えておきたいのがスタグフレーションです。景気の停滞(スタグネーション)とインフレが同時に起きる状態で、給料は増えないのに物価だけ上がっていく、いちばん苦しい組み合わせ。中央銀行にとっても厄介で、インフレを抑えようと利上げすれば景気がさらに冷え、景気を支えようと利下げすれば物価がもっと上がる、という板挟みになります。

物価と景気の組み合わせで見る4つの状態
状態物価景気株価への効き方
緩やかなインフレ年2%前後で上昇拡大している企業の売上も利益も伸びやすく、株には追い風になりやすい
急激なインフレ急ピッチで上昇過熱ぎみ中央銀行が利上げで抑えにかかるため、株には逆風
デフレ下がり続ける停滞値下げ競争で利益が細り、現金の価値が上がるので株は買われにくい
スタグフレーション上昇停滞・後退コスト増と需要減の板挟み。株にとって最も厳しい組み合わせ
インフレは静かな税金金利0.1%の預金にお金を置いたまま、物価が年2%上がると、実質的な購買力は毎年約1.9%ずつ減っていきます。1,000万円の預金なら年19万円が静かに溶けている計算です。株式や不動産などの資産は、長期ではインフレに強い置き場所とされてきました。

金利が上がると株価が下がるのはなぜ? — 2つの経路

「日銀(やFRB)が利上げ→株安」という反応には、ちゃんと理屈があります。細かく分けるといくつもありますが、大きくは2つの経路にまとめられます。

経路①は企業の借入コストです。金利が上がれば、借金をしている会社の利払いが増えて利益が削られます。有利子負債が1,000億円ある会社で金利が1%上がれば、利払いは年10億円増える計算。同時に、住宅ローンや自動車ローンの負担が増えた家計は消費を絞るので、企業の売上そのものも伸びにくくなります。コストが増えて売上が減る、二重の逆風です。

経路②は他の資産との比較です。株を持つのはリスクを取る行為ですから、投資家は「リスクを取らなくても得られる利回り」と常に比べています。国債の利回りが0.5%しかない世界では、配当利回り3%の株は魅力的に見えます。ところが国債が3%になったら、値下がりする可能性のある株にわざわざお金を置く理由が薄れる。株にライバルが現れるわけです。

経路②にはもう一段深い話があります。株価は「その会社が将来生み出す利益」を今の価値に割り引いたものだ、という考え方です。金利が上がると、この割り引く力が強くなり、同じ将来利益でも今の価値は小さくなります。だから利益が1円も減っていなくても、金利が上がるだけで理論的な株価は下がるのです。

逆に利下げは株の追い風です。「金利と株価はシーソー」とよく言われるのはこのためで、中央銀行の会合(日銀金融政策決定会合、米FOMC)の日に市場が固唾をのむ理由でもあります。

株の理論価格 ≒ 将来の利益 ÷ (1 + 金利)^年数 — 金利が上がると分母が大きくなり、株価は下がる
金利で将来価値はどれだけ変わる?10年後に受け取る100万円は、金利1%の世界では今の約90万円の価値、金利5%の世界では約61万円の価値しかありません。同じ100万円なのに3割も違う。利益の大半が遠い将来にある成長株ほど、金利上昇で大きく叩かれるのはこのためです。

利上げ・利下げで得する業種、損する業種

金利は、全銘柄に平等な逆風・追い風ではありません。同じ利上げでも、その会社の稼ぎ方によって真逆に効きます。ここを知っておくと、「利上げ=とりあえず全部売り」という短絡から抜け出せます。

ざっくり言えば、お金を貸して稼ぐ会社(銀行・保険)は金利上昇が追い風、お金を借りて事業を回す会社(不動産・インフラ・成長企業)は向かい風です。利下げ局面ではこの表がそのまま裏返ります。

利上げ局面での業種別インパクト(利下げ局面では逆になります)
業種の例利上げのとき理由
銀行追い風◎貸出金利と預金金利の差(利ざや)が広がり、本業の収益が増える
保険追い風○運用している債券の利回りが上がり、資産運用の収益が改善する
財務の健全な内需企業影響小○借金が少なく、利払いの増加をほとんど受けない
高配当・ディフェンシブ株やや向かい風債券の利回りが上がると、配当目当ての資金が債券に移りやすい
電力・鉄道・通信向かい風△巨額の設備投資を借金でまかなうため、利払い負担が重くなる
不動産・REIT向かい風△物件取得の借入コストが増え、住宅ローン金利上昇で買い手も減る
成長期待の高いIT・新興企業向かい風××利益の大半が遠い将来にあるため、将来価値の目減りが最も大きい
単純化しすぎにも注意「良い利上げ」もあります。景気が強すぎるくらい良いから利上げする局面では、株高と利上げが共存することも。逆に、景気が悪いのに物価高で利上げせざるを得ない局面はいちばん厳しい。金利の方向だけでなく「なぜ動かすのか」までセットで読みましょう。

日銀の金融政策 — 決定会合で何を見ればいい?

日銀の方針は、年8回開かれる金融政策決定会合で決まります。米国の同じ役割はFOMC(連邦公開市場委員会)で、こちらも年8回。市場参加者はこの日程を必ずカレンダーに入れています。

会合で決まるのは政策金利の水準だけではありません。国債をどれだけ買うか、長期金利をどの程度まで許容するか、といった量的な手段も含まれます。金利を下げきってしまった国が、それでも景気を支えるために使ってきたのが、こうした「量」の政策でした。

初心者が見るべきポイントは3つに絞れます。①決定そのもの(据え置きか、変更か)、②総裁の記者会見でのトーン、③展望レポートに載る物価と成長率の見通しです。市場が動くのは、決定そのものより「事前の予想と違ったとき」。据え置きが予想されていて据え置きなら株価はほとんど動かず、予想外の変更があれば大きく動きます。

金融政策決定会合でチェックする3点
  • ① 決定内容: 政策金利を上げたか、下げたか、据え置いたか。事前予想と一致していたかがすべて。
  • ② 総裁会見のトーン: 「次も動かす気がありそうか」を市場は言葉づかいから読み取ります。決定より会見で相場が動く日も珍しくありません。
  • ③ 展望レポート: 年に4回公表される、物価と経済成長率の見通し。将来の政策の方向を映す地図として読まれます。

「金利のある世界」の投資 — 銘柄選びはこう変わる

長いデフレとゼロ金利の時代が終わり、日本も金利と物価が動く世界に戻りつつあります。この環境では、借金の重い会社と軽い会社、値上げできる会社とできない会社の差が、業績にはっきり出るようになります。

金利がほぼゼロの世界では、借金のコストは実質的にタダ同然でした。だから財務が多少ゆるくても平気だった会社が、金利が戻ると急に息苦しくなります。銘柄選びでは有利子負債や自己資本比率のチェックがこれまで以上に重要になり、銀行など「金利上昇が追い風」になる業種も出てきます。

もうひとつの軸が価格決定力です。原材料費が上がったときに、堂々と値上げしても客が離れないブランドを持つ会社は、インフレを売上に転嫁できます。逆に値上げすると客が逃げる会社は、コスト増をそのまま利益の減少として飲み込むしかありません。インフレ環境では、この差が決算の明暗を分けます。

個人の家計側でも同じことが起きます。住宅ローンが変動金利なら返済額が増え、預金の利息はわずかながら増える。インフレ率を上回るリターンを目指すインデックス投資や、株式の配当が、現金の目減りに対抗する手段として意味を増していきます。

金利のある世界のチェックリスト①有利子負債は自己資本に対して重すぎないか ②自己資本比率は40%以上あるか ③値上げしても客が離れない商品か。この3つを満たす会社は、金利が動く局面でも比較的踏ん張れます。当サイトの株価一覧ページで自己資本比率を並べ替えて確認できます。

まとめ

金利はお金のレンタル料で、操縦するのは日銀。目標は年2%の緩やかなインフレで、インフレ下の現金は静かに目減りします。デフレは値下げ競争で利益が細る状態、スタグフレーションは物価高と不況が同時に来る最悪の組み合わせです。

金利が上がると株価が下がるのは、①企業の借入コストが増えて利益が削られる ②債券など他の資産に資金が流れ、将来利益の現在価値も目減りする、という2つの経路によります。ただし銀行のように利上げが追い風の業種もあり、金利は全銘柄に平等ではありません。

まずは自分の持っている銘柄が、金利上昇でどちら側に転ぶのかを確かめてみてください。有利子負債と自己資本比率を見るだけでも、ニュースの受け止め方が変わるはずです。

よくある質問

金利が上がるとなぜ株価が下がるのですか?

大きく2つの理由があります。ひとつは企業の借入コストが増え、利払いで利益が削られること。もうひとつは、預金や債券の利回りが上がることで、リスクを取って株を持つ魅力が相対的に下がることです。さらに、金利が上がると将来の利益を今の価値に換算した金額が小さくなるため、業績が変わらなくても理論的な株価は下がります。

インフレとは何ですか? わかりやすく教えてください。

モノやサービスの値段が全体的に上がり続ける状態のことです。裏返せば、同じ1万円で買えるモノが減っていく=お金の価値が下がることを意味します。年2%のインフレが10年続くと、100万円の購買力は約82万円分まで縮みます。日銀は経済が健全に回るサインとして、年2%程度の緩やかなインフレを目標にしています。

インフレとデフレ、スタグフレーションの違いは何ですか?

インフレは物価が上がり続ける状態、デフレは下がり続ける状態です。スタグフレーションは、景気が停滞しているのに物価だけが上がる状態を指します。デフレでは企業が値下げ競争で利益を減らし、スタグフレーションでは企業がコスト増と需要減に同時に苦しむため、株式市場にとってはスタグフレーションが最も厳しい環境とされます。

利上げで株価が上がる業種はありますか?

銀行がその代表です。貸出金利と預金金利の差である利ざやが広がり、本業の収益が改善するためです。保険会社も、運用している債券の利回りが上がるため恩恵を受けやすい業種です。逆に、不動産や設備投資の大きいインフラ企業、利益の大半が将来にある成長企業は、利上げで逆風を受けやすくなります。

日銀の金融政策決定会合はいつ開かれますか?

年8回開かれ、その都度、政策金利の水準や国債買い入れなどの方針が決まります。米国で同じ役割を果たすFOMC(連邦公開市場委員会)も年8回です。市場が大きく動くのは決定の内容そのものより、事前の予想と食い違ったときと、総裁の記者会見で次の一手への姿勢が示されたときです。

インフレのとき、預金と株のどちらがいいですか?

預金の金利がインフレ率を下回っていると、預金は実質的に目減りします。金利0.1%の預金で物価が年2%上がれば、購買力は毎年約1.9%ずつ減る計算です。株式や不動産は長期的にはインフレに強い資産とされてきましたが、短期的には利上げで下落することもあります。生活防衛資金は預金で確保しつつ、余裕資金を長期の分散投資に回すという使い分けが一般的な考え方です。

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