債券とは? — 国や会社にお金を貸す「借用書」の投資

債券(さいけん。英語ではbond)は、国や会社が「お金を貸してください。利子を払って、満期には全額返します」と発行する借用書のような商品です。国が発行すれば国債、地方自治体なら地方債、会社なら社債。満期まで持てば額面どおりのお金が戻り、その間は決まった利子を定期的に受け取れます。

株との根本的な違いは立場です。株主は会社のオーナーで、儲けの上限はないけれど、業績次第で配当も株価もゼロに近づき得る。債券の保有者は貸し主なので、もらえるのは決まった利子までです。その代わり、発行体が破綻しない限り満期に元本が返ってくる、という手堅さがあります。

会社が倒産したときの順番もはっきり違います。残った財産はまず銀行や債券の保有者などの債権者に配られ、株主に回ってくるのはそのあと。だから同じ会社に投資するのでも、社債を買うほうが株を買うより痛手が小さくて済みます。「リターンの上限が低いかわりに、順番が先」——これが債券の性格です。

では、個人はどうやって債券を買うのか。ルートは大きく4つあります。1本ずつ選ぶのが面倒なら、④の投資信託を1本持つのがいちばん手軽です。

個人が債券を買う4つのルート
  • ① 個人向け国債: 毎月発行され、証券会社や銀行で1万円から買えます。元本割れしない設計で、初心者の入口として定番。
  • ② 新窓販国債: こちらも国債ですが、金利は市場実勢のまま。5万円から買え、中途売却では価格が変動します。
  • ③ 社債: 企業が個人向けに募集するもの。募集期間が短く、人気の銘柄はすぐ埋まります。最低購入単位は100万円のことが多めです。
  • ④ 債券の投資信託・ETF: 国内外の何百本もの債券にまとめて分散できます。100円から買えて、償還を気にせず持ち続けられるのが利点。
株と債券の立場のちがい株は「その会社の一部を持つ」オーナー。債券は「その会社にお金を貸している」貸し主。オーナーは会社が伸びれば青天井、貸し主は伸びても受け取りは利子まで。そのかわり倒産時の弁済順位は貸し主が先です。

額面・利率・償還・単価 — 債券の4つの用語をまず押さえる

債券の説明で最初につまずくのが用語です。でも覚えるのは4つだけ。額面、表面利率、償還、単価。この4つの関係がわかれば、債券の商品説明はほぼ読めるようになります。

たとえば「額面100万円・表面利率年1.0%・償還2031年」の債券なら、毎年1万円(年2回なら5,000円ずつ)の利子を受け取り、2031年に100万円が返ってくる、という意味です。この設計は発行時に決まっていて、あとから変わりません。

ややこしいのが単価です。債券は途中で売買でき、そのときの値段は「額面100円あたりいくらか」で表示されます。ちょうど100円なら「パー」、それより安ければアンダーパー、高ければオーバーパーと呼びます。額面100万円の債券が単価98円で売られていたら、98万円払えば買えて、満期には100万円が戻る、ということです。

そして表面利率と利回りも別物です。表面利率はもらえる利子の率(発行時に固定)、利回りは購入価格に対して最終的にどれだけ得するかの率。単価98円で買えば、利子に加えて満期の2円分の値上がりも得られるので、利回りは表面利率より高くなります。

最終利回り(年率・概算) = {表面利率 + (100 − 購入単価) ÷ 残存年数} ÷ 購入単価 × 100
債券の基本用語
用語意味覚え方
額面(がくめん)満期に返ってくる金額。取引の単位にもなる貸した元本そのもの
表面利率(クーポン)額面に対して毎年もらえる利子の率。発行時に固定貸すときに決めた家賃の額
償還(しょうかん)満期になって額面が返ってくること。その日が償還日返済日
単価途中売買での値段。額面100円あたりで表示借用書そのものの中古価格

金利が上がると債券価格が下がるのはなぜ? — 具体的な数字で

債券でいちばん多くの人がつまずくのが、ここです。市場の金利が上がると、すでに発行されている債券(既発債)の価格は下がる。逆に金利が下がると、既発債の価格は上がる。金利と債券価格は、シーソーのように反対に動きます。

理由は「新しく出た商品と比べられるから」の一言に尽きます。数字で見てみましょう。

あなたが額面100万円・表面利率年1.0%・残り5年の国債を持っているとします。毎年もらえる利子は1万円です。ここで世の中の金利が上がり、同じ5年ものの新発債が年2.0%で発行されたとします。新しい債券なら毎年2万円もらえる。

この状況で、あなたの1%の債券を額面どおり100万円で買う人はいません。同じ100万円を出せば、年2万円もらえる新品が買えるのですから。あなたの債券が売れるためには、その差を値段で埋めるしかない。差は毎年1万円 × 残り5年 = 5万円。だから単価は95円前後まで下がり、95万円くらいでないと買い手がつかなくなります。

逆に金利が下がって新発債が年0.5%になれば、年1万円もらえるあなたの債券は「お宝」になり、105万円でも買いたい人が出てきます。これが「利上げは債券に逆風、利下げは追い風」と言われる正体です。

ただし大事な補足があります。この値下がりは、途中で売った場合にだけ現実になるものです。満期まで持ち切れば、単価がいくらに動いていようと額面100万円が返ってきます。「債券価格が下がった」というニュースを見ても、満期保有を前提にしているなら慌てる必要はありません。

なお、償還までの期間が長い債券ほど、この価格変動は大きくなります。残り5年なら差は5年分ですが、残り20年なら20年分の差を値段で埋めることになるからです。この「金利変化への敏感さ」をデュレーションと呼びます。金利の先行きが読めないときに短期債が選ばれるのは、このためです。

市場金利が上がる → すでに発行された債券の価格は下がる(シーソーの関係)
金利1%→2%で、価格はどれだけ下がる?額面100万円・年1.0%・残り5年の債券。市場金利が2.0%に上がると、新発債との利子の差は年1万円 × 5年 = 5万円。よって単価は約95円(95万円前後)まで下落します。同じ条件で残り20年なら差は約20万円分、単価80円台まで下がる計算です。期間が長いほど、金利変動のダメージは大きくなります。

個人向け国債とは? — 変動10年・固定5年・固定3年の違い

個人が日本国債を買ういちばん簡単な方法が、個人向け国債です。毎月発行されていて、証券会社や銀行の窓口・アプリから1万円単位で購入できます。利子は年2回、半年ごとに受け取ります。

種類は3つだけ。変動10年・固定5年・固定3年です。名前のとおり、金利が動くタイプかどうかと、満期までの長さが違います。

3つに共通する設計上の特徴が2つあります。ひとつは最低金利保証で、どんなに世の中の金利が下がっても年0.05%を下回りません。もうひとつは、満期前に売っても元本割れしない設計になっていること。上で説明した「金利が上がると債券価格が下がる」問題が、個人向け国債では起きないようにつくられています。

中途換金は発行から1年経てば可能です。そのとき直前2回分の利子(税引き前相当額の約8割)が差し引かれますが、元本そのものは減りません。「1年間は動かせないお金」で「元本は絶対に減らしたくない」なら、預金の次に検討する選択肢になります。

3つで迷ったら、変動10年を選ぶ人が多数派です。金利が上がる局面では受け取る利子も一緒に上がり、下がる局面でも0.05%の下限に守られる。つまり金利の先行きを当てにいかなくて済むからです。逆に「3年後に使うお金の置き場所」がはっきりしているなら、固定3年のほうが受け取り額を計算しやすくなります。

個人向け国債3種類の性格(適用金利は毎月の発行ごとに変わります)
種類金利のしくみ向いている人
変動10年半年ごとに金利を見直す。市場金利(10年国債の実勢)に連動して上下する金利が上がる局面でも取り残されたくない人。いつ使うか決めていないお金の置き場所
固定5年発行時の金利が満期まで変わらない。5年間ずっと同じ利子5年後の受取額を確定させたい人。金利が下がりそうだと考える人
固定3年発行時の金利が満期まで変わらない。3年間ずっと同じ利子使う時期が3年以内に決まっているお金。まず少額で試したい人
3種類に共通最低金利年0.05%を保証。1万円から1万円単位。年2回の利払い。発行1年後から中途換金でき、元本割れなし
個人向け国債と定期預金の使い分け1年以内に使うお金は定期預金や普通預金、1年より先まで置いておけるお金は個人向け国債、という切り分けがシンプルです。個人向け国債は発行から1年間は換金できないぶん、預金より高い金利がつくことが多い設計になっています。

株と債券の関係 — なぜ逆に動く? ポートフォリオでの役割

債券の真価は、株が暴落したときに発揮されます。株式市場がパニックになると、投資家は「とにかく安全なところへ」とお金を移します。その逃げ込み先が国債です。買われるので債券価格は上がる。つまり株が下がるときに債券が上がりやすい、という逆方向の関係が生まれます。

もうひとつの経路が金利です。景気が悪くなると中央銀行は金利を下げます。金利が下がれば、さきほどのシーソーで既発債の価格は上がる。景気悪化 → 株安 → 利下げ → 債券高、という流れです。

だから株と債券を両方持っていると、資産全体の振れ幅がならされます。たとえば株が30%下がった年に債券が5%上がっていれば、株式60%・債券40%のポートフォリオ全体では16%の下落で済む計算です(30% × 0.6 − 5% × 0.4)。同じ暴落でも、心の負担はまったく違ってきます。

この「株式60%・債券40%」は、世界の年金運用でも長く使われてきた伝統的な配分です。若くてリスクを取れる人は株の比率を高く、リタイアが近い人は債券を厚く——年齢や性格に応じて調整するのが資産運用の王道です。「100 − 年齢」を株式の比率にする、という古典的な目安もあります。

ただし、逆相関はいつでも成り立つわけではありません。インフレで金利が急上昇する局面では、株も債券も同時に下がることがあります。株安のときに債券が必ず助けてくれる、と過信しないでください。あくまで「多くの局面でクッションになりやすい」くらいの理解が正確です。

債券の本当の役割債券は「増やす」より「守りながら増やす」ための道具です。株100%の値動きが怖くて途中でやめてしまうくらいなら、債券を混ぜて心拍数を下げるほうが、結果的に長く続けられて増えることも多いのです。

債券のリスク — 格付け・信用リスク・為替リスク

「元本が返ってくる」のは、あくまで発行体が破綻しなければの話です。債券の最大のリスクは、貸した相手が返せなくなること(信用リスク・デフォルトリスク)。だから債券を選ぶときは、まず「誰に貸すのか」を見ます。

その手がかりが格付けです。S&Pグローバルやムーディーズ、日本のR&Iといった格付け会社が、発行体の返済能力をAAA(トリプルエー)からD(債務不履行)までの記号で評価しています。BBB以上を投資適格、BB以下を投機的等級(ハイイールド債・ジャンク債)と呼びます。

そして債券の世界でも「高利回りには理由がある」が鉄則です。信用力の低い会社は、高い利子をつけないとお金を貸してもらえません。利回りの高さは、貸し倒れリスクの値段そのものなのです。「年8%の社債」を見つけたら、なぜ8%も払わないと借りられないのかを先に考えてください。

外国債券には、さらに為替リスクが乗ります。米国債を年4%の利回りで買っても、円高が進めば円に戻したときに目減りします。たとえば1ドル150円のときに100万円分(約6,667ドル)を買い、1年後に4%増えて約6,933ドルになったとしても、そのとき1ドル135円まで円高が進んでいれば円換算で約93.6万円。利子を受け取ったのに約6.4万円のマイナスです。

逆に円安が進めば為替差益が上乗せされます。つまり外国債券は「安全な債券」ではなく「為替の値動きを持つ商品」だと考えるべきです。表面の利回りだけを見て飛びつかないよう気をつけましょう。

このほか、途中で売りたいときに買い手がつきにくい流動性リスクや、物価上昇で受け取る利子の実質価値が目減りするインフレリスクもあります。年1%の利子をもらっても、物価が年3%上がっていれば、購買力は毎年2%ずつ減っている計算です。

格付けの区分記号の例意味と債券の性格
最上級AAA・AA元本と利子の支払い能力が極めて高い。先進国の国債や超優良企業。利回りは低い
投資適格A・BBB支払い能力は十分。日本の大企業の社債の多くがこの帯。利回りは中程度
投機的等級BB以下ハイイールド債・ジャンク債と呼ばれる。利回りは高いが、デフォルトの確率も上がる
「元本保証」と「元本割れなし」は別物個人向け国債が元本割れしないのは、国が破綻しない前提での設計上の話です。社債や外国債券には同じ保証はありません。とくに「利回り年◯%・元本確保型」とうたう仕組債は、条件次第で大きく元本を失う設計のものがあります。仕組みを説明できない商品は買わない、が安全なルールです。

まとめ

債券は、国や会社にお金を貸して利子を受け取る投資です。額面・表面利率・償還・単価の4語を押さえれば、商品説明はだいたい読めます。満期まで持てば額面が返ってくるのが基本設計です。

最大のつまずきポイントは、金利と債券価格がシーソーの関係にあること。金利が上がると既発債は見劣りするので値下がりします。ただしこれは途中で売った場合の話で、満期保有なら額面が戻ります。個人向け国債は、そもそも元本割れしない設計になっています。

リスクは「誰に貸すか」で決まります。格付けを確認し、高利回りには必ず理由があると考えること。外国債券なら為替リスクが利回りを簡単に打ち消してしまう点も忘れないでください。

ポートフォリオでの役割は、暴落時のクッションです。株と債券は攻めと守りの名コンビ。まずは個人向け国債か、低コストの債券インデックスファンドを少額持ってみて、株が下がった日に自分の資産全体がどう動くかを体感するところから始めてみてください。

よくある質問

債券とは何ですか? 株とどう違いますか?

債券は、国や会社にお金を貸して利子を受け取り、満期に額面が返ってくる金融商品です。株はその会社のオーナーになる投資で、値上がり益に上限がないかわりに価値がゼロに近づくこともあります。債券の保有者は貸し主なので受け取りは決まった利子までですが、倒産時の弁済順位は株主より先で、発行体が破綻しなければ元本が戻ります。

金利が上がると債券価格が下がるのはなぜですか?

新しく発行される債券のほうが高い利子をつけるため、すでに発行された債券が見劣りするからです。額面100万円・年1%・残り5年の債券を持っているときに、新発債が年2%になったとします。利子の差は年1万円×5年で5万円。そのぶん値下げしないと買い手がつかないため、価格は95万円前後まで下がります。満期まで持てば額面は戻ります。

個人向け国債は変動10年・固定5年・固定3年のどれがいいですか?

金利の先行きを予想したくないなら変動10年が選ばれることが多いです。半年ごとに金利が見直されるため、金利上昇局面でも受け取る利子が増え、下落局面でも年0.05%の最低金利に守られます。使う時期が決まっているお金なら固定3年や固定5年で受取額を確定させる手もあります。3種類とも1万円から買え、発行1年後から元本割れなしで中途換金できます。

債券は元本保証ですか? 元本割れすることはありますか?

元本保証ではありません。発行体が破綻(デフォルト)すれば元本も利子も戻らない可能性があります。また満期前に売却する場合は、そのときの市場価格しだいで元本割れします。例外は個人向け国債で、中途換金しても元本は減らない設計です(直前2回分の利子相当額は差し引かれます)。外国債券は為替次第で円ベースの元本割れが起こります。

株と債券は両方持ったほうがいいですか?

資産全体の値動きを抑えたいなら有効です。株が暴落すると安全資産である国債にお金が逃げ込み、債券価格は上がりやすくなります。株式60%・債券40%は年金運用でも使われてきた伝統的な配分です。ただしインフレで金利が急上昇する局面では株と債券が同時に下がることもあるため、必ず逆に動くと過信しないでください。

利回りの高い外国債券や社債を買っても大丈夫ですか?

高い利回りは、それだけリスクが高いことの裏返しです。信用力の低い発行体は高い利子をつけないと借りられないため、格付けがBB以下の債券はハイイールド債と呼ばれデフォルト確率が上がります。外国債券は為替リスクも加わり、年4%の利子を受け取っても1割の円高で円ベースではマイナスになります。まずは格付けと通貨を必ず確認してください。

このテーマをもっと深めるなら

おすすめ本の一覧では、 お金の基礎から株式投資・ファイナンス・経営戦略まで26冊をジャンル別に紹介しています。

あわせて読みたい