投資信託とは? — 100円から分散できる「運用のお弁当パック」

投資信託(投信・ファンド。英語ではinvestment trust、米国式にはmutual fund)は、たくさんの人から集めたお金をひとつにまとめ、運用の専門家が株や債券分散投資してくれる商品です。おかずが少しずつ詰まったお弁当のように、1本の中に何十〜何千もの銘柄が入っています。

最大の魅力は、少額で一気に分散できること。トヨタもソニーも三菱UFJも自分で買えば数十万円ずつかかりますが、日本株の投資信託なら100円からまとめて買えます。全世界株式のファンドを1本買えば、それだけで50か国・3,000社近くのオーナーになれる計算です。「銘柄を選ぶ時間も知識もまだない」という人の最初の一歩に、これ以上ない仕組みです。

もうひとつ知っておきたいのが、投資信託は3つの会社で分担して運営されている点です。商品をつくって運用の指示を出す運用会社、窓口として売る販売会社(証券会社や銀行)、そして資産を実際に預かって管理する信託銀行。あなたのお金は信託銀行が「分別管理」しているので、運用会社や証券会社が倒産しても資産は守られます。

ただし元本保証ではありません。中身は株や債券なので、値下がりすれば投資したお金は減ります。「プロが運用するから減らない」ではなく「プロが分散してくれるから、1社の倒産で全滅することはない」——これが投資信託の正しい理解です。

投資信託の3つの利点① 100円から買える ② 1本で数百〜数千銘柄に分散できる ③ 銘柄選びと売買をプロに任せられる。この3つが揃っているから、NISAのつみたて投資枠の主役になっています。

基準価額とは? — 「1万口あたりの値段」。高い=割高ではありません

投資信託の値段は基準価額と呼ばれます。ポイントは、これが「1口あたり」ではなく多くの場合「1万口あたり」の金額だということ。運用スタート時は1万口=10,000円と決められていて、そこから運用成績に応じて上下します。基準価額12,000円なら、設定来で2割成長した状態です。

計算方法もシンプルです。ファンドが持っている株や債券の時価を全部合計し、そこから信託報酬などの費用を引いた金額(=純資産総額)を、発行済みの口数で割る。株価のように売り買いの需給で決まるのではなく、あくまで中身の時価で決まります。

そして株と決定的に違うのが、値段が1日1回しか動かないこと。その日の市場が閉まったあとに計算され、公表されるのは夕方から夜にかけてです。注文を出した時点では約定する値段がわからない(ブラインド方式と呼びます)のも株との大きな違いですが、長期の積立ではまったく気にする必要はありません。

初心者がほぼ100%誤解するのが、次のポイントです。「基準価額8,000円のファンドは、12,000円のファンドより割安」——これは完全な誤りです。基準価額は運用の歴史の結果でしかなく、株価のような割安・割高の意味を持ちません。同じS&P500に連動する2本のファンドなら、基準価額が9,000円でも25,000円でも、これから先の値動きはほぼ同じになります。

たとえるなら、同じカレーを「1皿」で出すか「大盛り1皿」で出すかの違いです。値札が高いほうが中身が濃いわけでも、味が違うわけでもありません。見るべきは値札ではなく、何に投資しているか(投資対象)といくらかかるか(コスト)です。

基準価額(円) = 純資産総額 ÷ 総口数 × 10,000
基準価額の高い安いで良し悪しは測れない「基準価額が下がっているから買い時」も同じ理由で成り立ちません。ついでに純資産総額(ファンドの規模)も見ておきましょう。あまりに小さいファンドは途中で運用をやめる繰上償還のリスクがあるため、数十億円以上あって、なおかつ右肩上がりで増えているものが安心です。

投資信託のコストは3つだけ — 買うとき・持つとき・売るとき

投資信託にかかるお金は、タイミングで3種類に分かれます。この3つさえ押さえれば、コスト面で失敗することはほぼありません。

とくに厄介なのが信託報酬(運用管理費用)です。銀行の手数料のように「〇〇円お支払いください」と請求されるわけではなく、毎日ちょっとずつ純資産から自動で引かれます。つまり基準価額にすでに反映されていて、明細のどこにも出てこない。だから「気づかないうちに効いている」という意味で、いちばん怖いコストなのです。

証券会社のファンド詳細ページを開くと、たいてい「手数料・費用」という欄にこの3つがまとめて書かれています。買う前に交付目論見書(こうふもくろみしょ。ファンドの取扱説明書)を開いて、次の3ヶ所だけ確認してみてください。

投資信託の3つのコスト
コストの種類かかるタイミング水準の目安と見方
購入時手数料買うとき1回だけ0〜3.3%程度。0円の商品を「ノーロード」と呼びます。ネット証券のNISA対象投信はほぼ0円なので、手数料を取る商品はまず候補から外して構いません
信託報酬(運用管理費用)持っている間ずっと毎日年0.05〜2%程度。インデックス型なら年0.1%前後、アクティブ型は年1〜2%が相場。最重要のチェック項目です
信託財産留保額解約(売却)するとき0〜0.3%程度。ゼロの商品も多数。これは運用会社の儲けではなく、途中で抜ける人の売却コストをファンドに残していく調整金です
交付目論見書で見るのは、この3ヶ所だけ
  • ① ファンドの目的・特色: 何に投資するのか。「先進国株式の指数に連動」「国内債券に投資」などが1行で書かれています。
  • ② 投資リスク: 株価変動リスク、為替変動リスクなど、何で値段が動くのか。外国資産なら為替リスクが必ず入ります。
  • ③ 手続・手数料等: 購入時手数料・信託報酬・信託財産留保額の3つ。ここが上の表と対応します。

信託報酬の目安は? — 年0.1%と年1.5%で、20年後に178万円の差

「たった1%くらい、誤差では?」と思う人が多いのですが、信託報酬は保有している間ずっと、しかも資産の全額に対してかかります。だから積み上がると金額が効いてきます。100万円を持っているだけで、年0.1%なら年1,000円、年1.5%なら年15,000円。10年持てば1万円と15万円です。

もっと現実的に、毎月3万円を20年間積み立てるケースで比べてみましょう。投資したお金の合計は720万円。運用リターンはどちらも年5%(コスト差し引き前)とします。

同じ運用成績なのに、コストの差だけで178万円。これは新車が1台買える金額です。しかもこの差は、あなたが何もしなくても自動的に生まれます。だから投資信託選びは「どれが上がりそうか」より先に「どれが安いか」を見るのが鉄則なのです。

同じ指数に連動するインデックスファンドなら、中身はほぼ同じ。だから信託報酬は安いほど正義です。年0.1%前後の低コスト投信が当たり前になった今、インデックス型で年0.5%を超える商品をあえて選ぶ理由はまずありません。

もう一歩踏み込むなら、実質コストも見てみてください。信託報酬のほかに、売買委託手数料や海外の保管費用などがかかっていて、それらを含めた本当のコストは運用報告書の「1万口当たりの費用明細」に載っています。信託報酬0.1%のファンドでも実質0.15%だった、ということはよくあります。

信託報酬(1日分) = 純資産総額 × 年率 ÷ 365 → 毎日、基準価額から自動で差し引かれる
月3万円×20年、年5%で比べると投資元本720万円。信託報酬 年0.1% → 約1,219万円。年1.5% → 約1,041万円。差は約178万円です。同じ条件で30年に伸ばすと、年0.1%なら約2,450万円、年1.5%なら約1,906万円。差は約544万円まで広がります。期間が長いほどコストの差は雪だるま式に効いてきます。

インデックスファンドとアクティブファンドの違いは?

投資信託は、運用の方針で大きく2つに分かれます。インデックスファンドは、日経平均やS&P500といった指数(インデックス)とまったく同じ値動きを目指す商品。中身は指数の構成銘柄をそのまま買うだけなので、運用の手間がかからず信託報酬が安くなります。

アクティブファンドは、運用のプロが銘柄を選んで指数を上回るリターンを狙う商品です。調査やファンドマネージャーの人件費がかかるぶん、信託報酬は年1〜2%と高くなります。

では、高いお金を払う価値はあるのか。世界中で行われた調査では、長期になるほどアクティブファンドの大半が指数に勝てないという結果が繰り返し確認されています。理由は単純で、市場全体の平均に勝つのはそもそも難しいうえに、そこから年1.5%のコストを引かれるからです。「平均+1.5%」を毎年出し続けて、やっとインデックスと引き分けになります。

だから初心者の出発点は、低コストのインデックスファンドで十分です。アクティブファンドが悪いわけではありませんが、選ぶなら「なぜこのファンドは指数に勝てると思うのか」を自分の言葉で説明できるようになってからで遅くありません。

インデックスファンドアクティブファンド
目指すもの指数と同じ値動き(市場平均)指数を上回るリターン
信託報酬の目安年0.05〜0.2%年1〜2%
中身のわかりやすさ指数を見れば中身がわかる運用方針次第で中身が変わる
向いている人何も考えず長期で積み立てたい人運用方針に納得して選べる人

分配金のデメリットは? — 「毎月分配型」がタコ足配当になる理由

分配金は投資信託版の配当で、運用成果の一部が定期的に支払われるお金です。毎月お金が振り込まれるのは気持ちがいいので、退職世代を中心に「毎月分配型」は長く人気を集めてきました。しかし、増やすことが目的なら分配金は不利に働きます。

理由は2つあります。ひとつは、分配金は利益が出ていなくても支払われることがあるから。運用でその分を稼げていないときは、あなたが預けた元本を取り崩して払い戻しているだけです。これは自分の足を食べるタコにたとえて「タコ足配当」と呼ばれます。

たとえば基準価額10,000円のファンドが毎月100円、年間1,200円を分配するとします。その年の運用益が1口あたり300円しかなければ、残りの900円は元本の払い戻し。基準価額はその分だけ下がります。手元に1,200円入ったように見えて、資産は増えていません。

税務上も、利益から出た分は普通分配金として約20%課税され、元本の払い戻し分は特別分配金(元本払戻金)として非課税になります。「非課税でお得」と説明されることがありますが、そもそも自分のお金が返ってきただけなので、課税されないのは当たり前です。

もうひとつの理由が複利です。分配金として外に出したお金は、もうファンドの中で働きません。分配せずに再投資するタイプなら、利益がそのまま次の利益を生む雪だるま効果が続きます。長期で増やしたいなら「分配金なし(または年1回)・自動再投資型」を選ぶのが基本形です。

実際、NISAのつみたて投資枠で買える商品は、国が定めた基準によって毎月分配型が除外されています。国が「長期の資産形成には向かない」と判断している、というのが何よりの答えです。

分配金利回りの高さに釣られない「分配金利回り年12%」と書かれたファンドを見ても、それが運用で稼いだ利益とは限りません。確認すべきは分配金の額ではなく、分配後の基準価額が長期でどう推移しているか。分配金を出すたびに基準価額が右肩下がりなら、それは元本を返してもらっているだけです。

投資信託とETFの違いは? — 上場しているかどうかで全部が変わる

ETF(Exchange Traded Fund・上場投資信託)は、その名の通り証券取引所に上場している投資信託です。中身は投資信託と同じ「詰め合わせパック」ですが、上場しているという1点から、売買の方法も値段の決まり方もまるごと変わります。

ETFは株とまったく同じように、取引時間中のリアルタイムの値段で売買できます。指値注文も成行注文も使えますし、1日のうちに何度でも売買できます。一方の投資信託は1日1回の基準価額での約定なので、その日いくらで買えたかは夜にならないとわかりません。

信託報酬はETFのほうがさらに安い傾向がありますが、ETFには売買のたびに株式売買手数料がかかり、市場価格が基準価額から少しズレる(乖離する)こともあります。またETFの分配金は自動で再投資されず、いったん現金で口座に入るので、再投資したいなら自分で買い直す手間が発生します。

結論として、毎月コツコツ積み立てる用途では投資信託が圧倒的にラクです。100円単位で金額指定して買えて、分配金も自動で再投資され、放置しても複利が回り続けます。ETFの出番は、まとまった資金を機動的に動かしたいときや、日本の投資信託にはない特定の資産に投資したいときです。

投資信託とETFの違い
投資信託ETF(上場投資信託)
売買方法販売会社に申し込む。1日1回だけ約定証券取引所でリアルタイム売買。指値・成行が使える
価格の決まり方中身の時価から計算される基準価額市場の需給で決まる取引所の価格(基準価額から乖離することも)
コスト信託報酬はやや高め。購入時手数料0円が主流信託報酬は安め。ただし売買のたびに株式売買手数料
積立のしやすさ100円から金額指定で自動積立。分配金も自動再投資1口単位での売買が基本。分配金は現金で受け取り、再投資は手動
向いている使い方毎月の積立で長期に増やすまとまった資金を機動的に売買する
初心者の結論NISAのつみたて投資枠で、低コストのインデックス投資信託を毎月自動積立——迷ったらこれが最適解です。ETFは株の売買に慣れて、指値注文が普通に打てるようになってからで十分間に合います。

まとめ

投資信託は、100円から何百社にも分散できる運用のお弁当パック。値段は1日1回の基準価額で、これは1万口あたりの金額です。高い・安いに割安割高の意味はないので、値札ではなく中身とコストを見てください。

コストは購入時手数料・信託報酬・信託財産留保額の3つ。とくに信託報酬は、年0.1%と年1.5%の差が月3万円20年で178万円にもなります。同じ指数に連動するなら中身は同じなのですから、迷ったら安いほうを選んで間違いありません。

分配金は「もらえて嬉しい」ではなく「複利が止まる」と考えるのが長期投資の発想です。毎月分配型は元本を取り崩している可能性があるので、増やす目的なら再投資型を選びましょう。ETFはリアルタイムで売買できる上場版で、積立ならふつうの投資信託のほうがラクです。

まずは証券口座で「信託報酬が安い順」に並べ替えて、上位に出てくる全世界株式や米国株式のインデックスファンドの目論見書を1本開いてみてください。投資対象とコストの2ヶ所を読めれば、もう投信選びの基礎は完成しています。

よくある質問

投資信託とは何ですか? 初心者でも大丈夫ですか?

投資信託は、多くの人から集めたお金をまとめて、運用の専門家が株や債券に分散投資する商品です。1本買うだけで数百〜数千の銘柄に分散でき、ネット証券なら100円から購入できます。銘柄選びの知識がなくても始められるため、むしろ初心者向きの商品です。ただし元本保証ではなく、値下がりすれば投資額は減ります。

信託報酬はどのくらいが目安ですか?

インデックスファンドなら年0.1%前後、高くても年0.2%以内が目安です。アクティブファンドは年1〜2%が相場になります。毎月3万円を20年積み立てた場合、年0.1%と年1.5%では最終的な金額に約178万円の差が生まれます。同じ指数に連動する商品は中身がほぼ同じなので、信託報酬が低いものを選ぶのが合理的です。

基準価額が高いファンドは割高ですか?

割高ではありません。基準価額は1万口あたりの金額で、そのファンドが運用を始めてからどれだけ増えたかという履歴を表しているだけです。同じS&P500に連動する2本のファンドなら、基準価額が9,000円でも25,000円でも、今後の値動きはほぼ同じになります。株価と違って割安・割高の判断材料にはならないと覚えておきましょう。

投資信託とETFはどちらを選べばいいですか?

毎月コツコツ積み立てるなら投資信託が便利です。100円から金額を指定して自動積立でき、分配金も自動で再投資されるためです。ETFは取引所でリアルタイムに売買でき信託報酬も安めですが、売買ごとに株式売買手数料がかかり、分配金の再投資は自分で行う必要があります。長期の積立が目的なら投資信託から始めるのが無難です。

分配金は受け取ったほうが得ですか? デメリットはありますか?

資産を増やす目的なら、分配金を出さない再投資型のほうが有利です。分配金には運用益からではなく元本を取り崩して支払われるケースがあり、これはタコ足配当と呼ばれます。分配金を受け取ると基準価額はその分下がり、外に出たお金は複利で働かなくなります。実際、NISAのつみたて投資枠の対象商品からは毎月分配型が除外されています。

投資信託にかかる手数料は全部でいくつありますか?

大きく3つです。買うときの購入時手数料(0〜3.3%程度。0円のノーロードが主流)、保有中に毎日引かれる信託報酬(年0.05〜2%程度)、売るときの信託財産留保額(0〜0.3%程度、ゼロも多い)。このうち金額に最も影響するのは信託報酬です。実際の総コストは、運用報告書の「1万口当たりの費用明細」で確認できます。

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