貸借対照表(BS)とは? — 決算日の財産リスト

貸借対照表(BS: Balance Sheet)は、決算日時点の会社の財産状況を1枚にまとめた表です。読み方は「たいしゃくたいしょうひょう」、実務では「ビーエス」「バランスシート」と呼ばれます。

損益計算書(PL)が1年間の動きを撮った動画だとすれば、BSは決算日という1日を切り取った写真です。3月31日の23時59分に会社の全財産と全借金を並べたらこうなりました、という一覧だと思ってください。

構造はシンプルで、左側に資産(持っているもの)、右側に負債(返す必要のあるお金)と純資産(返さなくていい自前のお金)が並びます。右側は「お金をどう集めたか」、左側は「集めたお金がいま何に姿を変えているか」を表しています。

そしてBSを読むと、PLではわからないことがわかります。それは会社の頑丈さです。今年たまたま儲かったかどうかではなく、不況が2年続いても持ちこたえられる体力があるか。それが写っているのがこの1枚です。

資産 = 負債 + 純資産(左右は必ず一致する)

なぜ左右がぴったり釣り合う? — 住宅ローンで家を買う例

「左右が必ず一致する」と言われてもピンとこないので、マイホームで考えてみます。あなたが5,000万円の家を、頭金1,500万円と住宅ローン3,500万円で買ったとします。

このとき、あなたの左側(資産)には5,000万円の家があります。右側には、返さなければいけない住宅ローン3,500万円(負債)と、自分で出した頭金1,500万円(純資産)。3,500万+1,500万=5,000万で、左右はぴったり一致します。

一致するのは当たり前で、5,000万円の家は「どこかから調達した5,000万円」がなければ買えないからです。集めたお金は必ず何かの形になって手元にある。だから左右は絶対にズレません。これがバランスシートと呼ばれる理由です。

ここに預金300万円を足すと、資産は5,300万円、負債は3,500万円のまま、純資産は1,800万円になります。毎月ローンを返すと、預金(資産)とローン(負債)が同じ額だけ減るので純資産は変わりません。いっぽう給料から貯金が増えれば、資産だけが増えて純資産が増えます。会社もまったく同じで、稼いだ利益は純資産に積み上がっていきます。

あなた個人のバランスシート資産=家5,000万円+預金300万円=5,300万円。負債=住宅ローン3,500万円。純資産=1,800万円。この1,800万円が、いま全部売って全部返したら手元に残る金額です。会社のBSで見る純資産も、意味はまったく同じです。

貸借対照表の5つのブロック — 流動・固定・純資産を表で

BSは大きく5つのブロックでできています。左側が流動資産と固定資産、右側が流動負債・固定負債・純資産。この5つの箱の名前と中身がわかれば、BSは読めたも同然です。

架空の会社「サンプル製作所」(売上高1,000億円、当期純利益67億円)のBSで見てみましょう。総資産1,200億円の会社です。

左の合計は500億+700億=1,200億円。右の合計は350億+250億+600億=1,200億円。ちゃんと一致していますね。

サンプル製作所の貸借対照表(総資産1,200億円)
ブロック位置中身の例金額
流動資産左・上現金及び預金200億円、売掛金180億円、棚卸資産(在庫)120億円など、1年以内に現金になるもの500億円
固定資産左・下土地建物・機械450億円、のれん・ソフトウェア100億円、長期保有の投資有価証券150億円など、1年を超えて使うもの700億円
流動負債右・上買掛金200億円、短期借入金100億円、未払金50億円など、1年以内に払うお金350億円
固定負債右・中長期借入金200億円、退職給付引当金50億円など、返済が1年より先のお金250億円
純資産右・下資本金100億円、資本剰余金100億円、利益剰余金420億円、自己株式−20億円600億円

純資産とは? — 返さなくていい自前のお金

純資産とは、資産から負債を引いた残り。つまり会社が持っているものを全部売って、借金を全部返したあとに残る金額です。株主のものなので「自己資本」「株主資本」とも呼ばれます(細かくは少し範囲が違いますが、初心者のうちは同じものと考えて差し支えありません)。

純資産の中身は主に4つです。①資本金と②資本剰余金は、株主が会社に出したお金そのもの。③利益剰余金は、創業から今日までに稼いだ利益のうち、配当に回さず社内にためてきた分の累計です。④自己株式は会社が買い戻した自社株で、マイナスとして表示されます。

とくに見てほしいのが利益剰余金です。サンプル製作所は純資産600億円のうち420億円が利益剰余金。つまり純資産の7割は、株主から集めたお金ではなく、自分で稼いで積み上げてきたお金だということ。ここが毎年増えている会社は、稼いで蓄える好循環ができています。逆に利益剰余金がマイナス(累積赤字)の会社は、創業以来トータルで赤字ということです。

純資産は株価指標にも直結します。純資産600億円を発行済株式数1億株で割ると、1株あたり純資産(BPS)は600円。株価が1,000円ならPBRは約1.7倍という計算になります。また当期純利益67億円 ÷ 純資産600億円 = 約11%がROE(自己資本利益率)です。

純資産 = 資産 − 負債(1株あたり純資産BPS = 純資産 ÷ 発行済株式数)
バリュー投資との深い関係PBR1倍割れ=「株価がBSの純資産より安い」状態。つまりバリュー投資家は、いつもBSと株価を見比べているのです。BSが読めると、PBRの意味が腹落ちします。

投資家が見る3つのポイント — 自己資本比率・現金・純資産の推移

BSは項目が多くて圧倒されますが、初心者が見るべきところは3つに絞れます。証券アプリの財務タブでも、この3つはたいてい確認できます。

自己資本比率のざっくりした目安(事業会社の場合)
自己資本比率評価どう読む?
70%以上非常に頑丈無借金経営に近い。不況には強いが、借入を活かせておらずROEは低めになりがち
40〜70%安心圏事業会社の理想的なゾーン。ここに入っていれば財務はまず心配ない
20〜40%普通借入を使って事業を回している状態。設備投資の重い業種では標準的
20%未満要注意不況や金利上昇に弱い。ただし銀行・リース・不動産などは構造的に低く、それが正常
BSで見る3点
  • ① 自己資本比率: 総資産のうち純資産が何%か。サンプル製作所なら600億 ÷ 1,200億 = 50%。事業会社なら40%以上が安心の目安で、会社の倒産しにくさを表します。
  • ② 現金と有利子負債のバランス: 手元の現金・預金が、利息のつく借金(短期借入金+長期借入金+社債)より多ければ「実質無借金」。サンプル製作所は現金200億円に対して有利子負債300億円なので、差し引き100億円の借金超過です。この差が小さいほど不況への耐久力があります。
  • ③ 純資産が毎年増えているか: 純資産は会社が積み上げてきた利益の貯金箱。5年並べて右肩上がりなら、稼いで蓄える好循環ができています。減っている場合は、赤字が続いているか、稼ぎ以上に配当や自社株買いをしているかのどちらかです。

「流動」と「固定」の違いは? — 1年で線を引く

BSの資産と負債は、それぞれ「流動」と「固定」に分かれています。分ける基準はシンプルで、1年以内に現金化・返済されるものが流動、それより長いものが固定です。

ここで簡単な健全性チェックができます。流動資産が流動負債より多ければ、1年以内の支払いは1年以内に入ってくるお金でまかなえる計算になります。この比率を流動比率と呼び、サンプル製作所なら500億 ÷ 350億 = 約143%。一般に100%を大きく割っている会社は、資金繰りに注意が必要です。

また、BSの形からは商売の種類まで透けて見えます。固定資産がやたら大きい会社は工場や設備で稼ぐ装置産業。資産のほとんどが流動資産(現金と売掛金)ならIT・サービス業。在庫(棚卸資産)が重い会社は小売や製造業、という具合です。

在庫については、増え方にも注目してください。売上高の伸び以上に棚卸資産が増えているなら、売れ残りが積み上がっているサインかもしれません。BSの数字は、次の年のPLの前触れになることがあります。

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100(100%以上が目安)

貸借対照表の落とし穴 — 数字を鵜呑みにしない

BSは事実の一覧に見えますが、実は「見積もり」が混ざっています。初心者が気をつけたい3点を挙げます。

のれんは消えることがある: 他社を買収したときに、買収額と相手の純資産の差額が「のれん」として固定資産に載ります。買収がうまくいかないと、のれんを一気に取り崩す減損損失が発生し、純資産が大きく減ることがあります。固定資産に占めるのれんの割合が大きい会社は、この点だけ頭に入れておきましょう。

② 資産の金額は時価とは限らない: 土地は原則として買ったときの値段(取得原価)で載り続けます。何十年も前に買った都心の土地が帳簿上は安いまま、ということが普通にあります。逆に言えば、BSの純資産より実質的な価値が大きい会社も存在します。

③ 総資産が大きい=強い、ではない: 資産をたくさん持っていても、それが稼ぎに結びついていなければ意味がありません。総資産に対してどれだけ利益を生めているかはROA、純資産に対してどれだけ稼げているかはROEで測ります。BSは必ずPLとセットで見てください。

業種で「普通」が違う銀行のBSは預金(負債)が巨大で自己資本比率が数%ですが、それが正常な姿です。不動産やリースも借入で資産を持つのが商売なので、比率は低く出ます。BSの数字は必ず同業他社と比べましょう。異業種比較は意味がありません。

まとめ

貸借対照表は、流動資産・固定資産・流動負債・固定負債・純資産の5ブロックでできた財産の設計図。集めたお金は必ず何かの形で手元にあるので、左右は1円単位で必ず一致します。

純資産は、資産から負債を引いた残り。返さなくていい自前のお金であり、そのうち利益剰余金は創業以来ためてきた利益の累計です。ここが毎年増えている会社は、稼いで蓄える好循環ができています。

見るべきは自己資本比率(40%以上が目安)・現金と有利子負債のバランス・純資産の推移の3点。PBRやROEの土台でもあり、バリュー投資家にとって一番の相棒になる1枚です。まずは気になる会社の自己資本比率を、同業3社と並べて見るところから始めてみてください。

よくある質問

純資産とは何ですか?

資産から負債を引いた残りで、会社の持ちものを全部売って借金を全部返したあとに残る金額です。株主のものなので自己資本・株主資本とも呼ばれます。中身は株主が出した資本金・資本剰余金と、創業から今日までにためた利益である利益剰余金が中心です。純資産を発行済株式数で割ったものが1株あたり純資産(BPS)で、PBRの計算に使われます。

貸借対照表の左右がぴったり一致するのはなぜですか?

右側が「お金をどう集めたか」、左側が「集めたお金が何に姿を変えているか」を表しているからです。5,000万円の家は、住宅ローン3,500万円と頭金1,500万円という調達があって初めて買えます。集めた金額と、その使い道の合計は必ず同じになるので、左右がズレることはありません。だからバランスシートと呼ばれます。

自己資本比率は何%あれば安心ですか?

事業会社なら40%以上が一つの安心ラインです。70%を超えるとかなり頑丈で不況にも耐えられますが、借入をうまく使えていないぶんROEは低めになりがちです。20%を下回ると金利上昇や不況に弱くなります。ただし銀行・リース・不動産は借入で資産を持つのが商売の構造なので、比率が低くても異常ではありません。必ず同業他社と比べてください。

流動資産と固定資産の違いは何ですか?

1年以内に現金になるかどうかで分かれます。流動資産は現金及び預金、売掛金、棚卸資産(在庫)など、1年以内に現金化される見込みのもの。固定資産は土地・建物・機械、のれん、長期保有の投資有価証券など、1年を超えて使い続けるものです。負債も同じ基準で流動負債と固定負債に分かれ、流動資産÷流動負債で計算する流動比率が資金繰りの目安になります。

純資産と時価総額は違うのですか?

まったく別のものです。純資産は貸借対照表に載っている帳簿上の価値で、資産から負債を引いた金額。時価総額は株価×発行済株式数で、市場がその会社につけている値段です。両者の比率がPBRで、時価総額が純資産を下回る状態(PBR1倍割れ)は、市場がその会社の帳簿上の価値すら評価していないことを意味します。

利益剰余金がマイナスの会社は危ないですか?

創業から今日までの利益の累計がマイナス、つまりトータルで赤字という状態なので、慎重に見るべきサインです。ただし研究開発に長い年月がかかるバイオ企業や、赤字を先行させて急拡大している成長企業では珍しくありません。判断するには、営業キャッシュフローがプラスに転じているか、手元の現金が何年分あるかを合わせて確認してください。

このテーマをもっと深めるなら

おすすめ本の一覧では、 お金の基礎から株式投資・ファイナンス・経営戦略まで26冊をジャンル別に紹介しています。

あわせて読みたい