自己資本比率とは? — 財産のうち「返さなくていいお金」の割合
自己資本比率(じこしほんひりつ・Equity Ratio)は、「会社が持っている財産(総資産)のうち、返さなくていい自前のお金(自己資本)が何%か」を表す数字です。決算短信の1ページ目に必ず載っている、財務の健全さを見るいちばん基本的な指標です。
5,000万円の家を、頭金4,000万円+ローン1,000万円で買った人と、頭金500万円+ローン4,500万円で買った人を想像してください。同じ家でも、収入が途絶えたときに耐えられる期間はまるで違います。前者が「自己資本比率80%」、後者が「10%」の会社です。
会社の場合、返さなくていいお金とは、株主が出資したお金(資本金)と、これまで稼いで社内に貯めてきた利益(利益剰余金)のこと。逆に返さなければいけないお金が、銀行からの借入金や社債、仕入先への買掛金です。この2つのバランスが、そのまま会社の粘り強さになります。
なぜこれが投資で効くのか。どんなに割安な株でも、その会社が倒産すれば株の価値はゼロになるからです。PERやPBRが「どれだけ得か」を測る攻めの指標だとすれば、自己資本比率は「そもそも生き残れるか」を測る守りの指標です。
自己資本比率の目安は何%? — 業種別の早見表
一般的な事業会社なら、40%以上でひとまず安心、50%超なら財務はかなり頑丈です。逆に10%台以下だと、不況で赤字が続いたときの粘り強さに不安が残ります。
ただし、この40%という数字をすべての会社に当てはめてはいけません。業種によって「普通の水準」がまったく違うからです。線路も車両も抱える鉄道会社と、在庫も工場も持たないソフトウェア会社では、そもそも必要な資産の量が違います。
下の表は、業種ごとのざっくりした目安です。まずは自分が見ている銘柄がどのグループに入るかを確認して、そのうえで同業他社と比べてみてください。
| 業種の例 | 自己資本比率の目安 | その水準になる理由 |
|---|---|---|
| 銀行・保険・証券 | 3〜10%程度 | 預金や保険料という他人のお金を預かって運用するのが本業。低くて当たり前で、健全性は別の規制上の指標で測る |
| リース・消費者金融 | 10〜20% | 借りたお金を貸し出すのが商売。借入が資産の大半を占める構造になる |
| 電力・鉄道・不動産 | 20〜35% | 巨額の設備や物件を長期の借入でまかなう。収入が安定しているため、低めでも回っていく |
| 小売・外食 | 30〜45% | 在庫と店舗を抱えるが、商品の回転が速い。40%前後なら標準的 |
| 製造業(自動車・機械・化学) | 40〜60% | 景気の波を受けるため厚めの自己資本が必要。40%以上が1つの合格ライン |
| 医薬品・情報通信・ソフトウェア | 60〜80% | 設備が軽く、稼いだ利益が現金として積み上がりやすい |
なぜ銀行の自己資本比率は数%でも正常なのか
銀行の自己資本比率を見て驚く人は多いはずです。5%前後、場合によっては3%台。事業会社の感覚だと「いつ潰れてもおかしくない」に見えます。
でも銀行の商売を考えると納得できます。銀行は私たちから預金を集めて、それを企業や個人に貸し出すのが本業です。預金は会計上、銀行にとっての「負債」。つまり預金を集めれば集めるほど総資産がふくらみ、自己資本比率の分母だけが大きくなっていきます。ビジネスモデル上、低くなるのが当たり前なのです。
そのかわり銀行には、BIS規制(自己資本比率規制)という専用の物差しがあります。資産をリスクの大きさに応じて重みづけして計算するもので、国際業務を行う銀行には8%以上、国内業務のみの銀行には4%以上という基準が課されています。銀行の健全性を見るなら、決算短信に載っている一般的な自己資本比率ではなく、こちらの数字を見てください。
リース会社や消費者金融も同じ構造です。「お金を借りて、それを誰かに貸す」商売では、借入が資産の大半になります。この手の業種で自己資本比率が低いことを理由に敬遠するのは、単純にモノサシを間違えているだけ、ということになります。
自己資本比率が低い会社は危ない? — 1つの数字では倒産リスクは測れない
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。自己資本比率が低いこと自体は、倒産の理由になりません。会社が潰れるのは、赤字だからでも借金が多いからでもなく、支払いに使える現金が尽きたときだけです。
実際、自己資本比率20%台でも安定して現金を稼ぎ続ける鉄道会社は倒れませんし、自己資本比率60%でも本業から現金が出ていかない会社は、貯えを食いつぶしていずれ行き詰まります。自己資本比率はあくまで「体力の残量」を示すもので、「いま出血しているか」までは教えてくれません。
だから自己資本比率が低い会社を見つけたら、次の4つを必ず並べて確認してください。ここまで見て、はじめて危険度の判断ができます。
- ① 有利子負債の額と推移: 負債のうち利息が発生するもの(借入金・社債)だけを抜き出します。買掛金が多いだけなら心配は小さく、有利子負債が年々増えているなら要注意です。
- ② 営業キャッシュフロー: 本業でどれだけ現金を稼げているか。ここがプラスで安定していれば、借金が多くても返済は回ります。3期連続でマイナスなら、自己資本比率が何%だろうと危険信号です。
- ③ 有利子負債 ÷ 営業キャッシュフロー: いまの稼ぎで借金を返しきるのに何年かかるかを示す倍率。おおむね10倍以内なら許容範囲、20倍を超えるとかなり重いと考えられています。
- ④ 流動比率: 1年以内に返す負債に対して、1年以内に現金化できる資産が何%あるか。100%を下回ると短期の資金繰りが苦しく、150%以上あれば当面の支払いには余裕があります。
高ければ高いほど良い? — ROEとのシーソー関係
では自己資本比率は高ければ高いほどいいのかというと、そうでもありません。ここでROE(自己資本利益率)との関係が効いてきます。
ROEの記事で「借金を増やすとROEは高く見える」というからくりを紹介しました。実はそのからくりを見破る相棒が、この自己資本比率です。
ROE20%で自己資本比率60%なら、借金に頼らず本当に商売がうまい会社。ROE20%でも自己資本比率10%なら、借金のレバレッジで数字を演出している可能性があります。ROEの高さに惹かれたときほど、自己資本比率を隣に並べてみてください。
逆方向の落とし穴もあります。自己資本比率80%で現金を大量に抱えているのに、設備投資も自社株買いも配当もしない会社。安全ではありますが、株主から預かったお金を寝かせているだけなので、ROEは下がり続けます。市場はこういう会社にPBR1倍割れの評価をつけがちで、近年は東京証券取引所からも資本効率の改善を求められています。
バリュー投資では「割安な株ほど、何か問題を抱えていないか疑う」のが基本動作です。PBRが低くて配当も高いのに自己資本比率が一桁——そんな会社は、市場が倒産リスクを織り込んで安値をつけているのかもしれません。
どこで確認する? — 決算短信の見る場所と、自己資本と純資産の違い
自己資本比率は自分で計算する必要はありません。決算短信の1ページ目、「連結財政状態」という表の中に、総資産・純資産・自己資本比率・1株あたり純資産が横並びで載っています。証券会社のアプリなら、銘柄ページの「財務」や「業績」のタブです。
見るときのコツは、直近の1期だけでなく3〜5期分を並べること。同じ40%でも、55%から下がってきた40%と、25%から上がってきた40%では意味が正反対です。会社四季報なら過去数期分が1ページに並んでいるので、推移を追うのに便利です。
もう1つ、細かいですが知っておくと得をする話。「自己資本」と「純資産」は微妙に違います。純資産から新株予約権と非支配株主持分(子会社の他の株主の取り分)を除いたものが自己資本です。多くの会社では差はわずかですが、子会社を多く抱える持株会社では数%ずれることがあります。
- ① 銘柄を検索して、銘柄詳細ページを開く
- ② 「財務」「業績」「企業情報」といったタブを選ぶ
- ③ 自己資本比率(または株主資本比率)の欄を見る。過去数期分が並んでいれば推移も確認する
- ④ 同じ業種のライバル2〜3社で同じ手順を繰り返し、数字を並べて比べる
似た指標との違い — D/Eレシオ・流動比率との使い分け
財務の安全性を見る指標は、自己資本比率だけではありません。それぞれ見ている時間軸が違うので、使い分けを覚えておくと判断がぐっと速くなります。
ざっくり言えば、自己資本比率は「長期の体力」、流動比率は「1年以内の資金繰り」、D/Eレシオは「借金への依存度」。倒産の心配なら流動比率と営業キャッシュフロー、借金の重さが気になるならD/Eレシオ、というふうに使い分けてください。
| 指標 | 計算のしかた | 何がわかる? 目安は? |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資産 × 100 | 長期的な財務の体力。一般的な事業会社なら40%以上が目安 |
| D/Eレシオ | 有利子負債 ÷ 自己資本 | 借金への依存度。1倍以下なら健全、2倍を超えると重いとされる |
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 1年以内の支払い能力。100%割れは危険、150%以上あれば余裕 |
| 営業キャッシュフロー | キャッシュフロー計算書から直接読む | 本業で現金を稼げているか。継続的なマイナスが、いちばん危険なサイン |
まとめ
自己資本比率は会社の倒産しにくさを測る「体力」の指標。一般的な事業会社なら40%以上が目安で、50%超なら頑丈。ただし銀行やリースは数%〜20%でも正常なので、必ず同業どうしで比べてください。
そして低いからといって、それだけで危険とは言えません。会社が倒れるのは現金が尽きたときです。有利子負債、営業キャッシュフロー、流動比率——この3つを重ねてはじめて、倒産リスクの判断ができます。
高すぎるのも万能ではありません。現金を寝かせたままの会社はROEが下がり、PBR1倍割れで放置されがちです。頑丈さと稼ぐ力は、いつもセットで見ましょう。
まずは気になっている銘柄の自己資本比率を、同業3社と並べて見るところから始めてみてください。1銘柄30秒で、割安株投資の「守り」がひとつ固まります。
よくある質問
自己資本比率は何%あれば安心ですか?
一般的な事業会社なら40%以上が安心の目安で、50%を超えていれば財務はかなり頑丈です。20%を下回ると不況時の耐久力に不安が出てきます。ただし業種によって基準は大きく変わり、銀行や保険は3〜10%、リースは10〜20%、電力や鉄道は20〜35%が正常な水準です。まずは同じ業種の会社2〜3社と並べて比べてください。
自己資本比率が低い会社は倒産しやすいのですか?
低いこと自体は倒産の直接的な理由になりません。会社が倒れるのは支払いに使える現金が尽きたときだけで、自己資本比率は「体力の残量」を示すにすぎないからです。低い会社を見つけたら、有利子負債の推移、営業キャッシュフローがプラスで安定しているか、流動比率が100%を超えているかを合わせて確認してください。営業キャッシュフローが数期連続でマイナスなら、比率にかかわらず危険信号です。
銀行の自己資本比率が数%しかないのはなぜですか?
銀行は預金という他人のお金を集めて貸し出すのが本業で、預金は会計上は負債になるためです。預金を集めるほど総資産がふくらみ、比率の分母だけが大きくなるので、5%前後でも正常です。そのかわり銀行にはBIS規制という専用の指標があり、国際業務を行う銀行は8%以上、国内業務のみの銀行は4%以上が必要とされています。銀行の健全性はこちらで判断します。
自己資本比率は高ければ高いほど良いのですか?
高すぎるのも評価されないことがあります。自己資本比率80%で現金を大量に抱えながら、設備投資も自社株買いも配当もしない会社は、株主から預かったお金を寝かせている状態で、ROE(自己資本利益率)が下がり続けます。市場はこうした会社にPBR1倍割れの評価をつけがちです。財務の頑丈さと、稼ぐ力・資本効率はセットで確認してください。
自己資本と純資産は何が違いますか?
純資産から新株予約権と非支配株主持分を除いたものが自己資本です。非支配株主持分とは、連結している子会社のうち親会社以外の株主が持つ取り分のこと。親会社の株主のものではないため、自己資本からは除きます。多くの会社では両者の差はわずかですが、子会社を多く抱える持株会社では数%ずれることがあるので、比率を自分で計算するときは注意してください。
自己資本比率はどこで確認できますか?
決算短信の1ページ目にある「連結財政状態」の表に、総資産や純資産と並んで載っています。証券会社のアプリなら銘柄ページの「財務」や「業績」タブ、会社四季報なら財務欄です。自分で計算する必要はありません。確認するときは直近1期だけでなく3〜5期分を並べて、上がってきた40%なのか下がってきた40%なのかまで見ると精度が上がります。
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