決算書とは? — 会社の「健康診断書」を3枚で読む

決算書とは、会社が1年(または3ヶ月)でいくら稼ぎ、いま何を持っていて、現金がどう出入りしたかをまとめた成績表です。正式には財務諸表と呼びます。人間でいえば健康診断書。血圧も体重も検査値も、全部この1式に載っています。

中身は大きく3枚に分かれます。損益計算書(P/L)は「1年でいくら稼いだか」を示す成績表、貸借対照表(B/S)は「いま何をどれだけ持っているか」を示す財産目録、キャッシュフロー計算書(C/F)は「現金が実際にどれだけ増減したか」の記録です。

健康診断にたとえるなら、損益計算書が体力測定の結果、貸借対照表が体組成計に乗ったときの数値、キャッシュフロー計算書が血液検査。どれか1つだけでは健康状態はわかりませんが、初心者がいきなり3枚とも読む必要はありません。まずは損益計算書だけで十分です。

そして重要なのは、これらを毎回フルで読む必要はまったくないということ。株を持ち続けるかどうかの判断に必要な情報は、決算短信の1ページ目にほぼすべて要約されています。

覚えておく3つの略称P/L(損益計算書)=どれだけ稼いだか。B/S(貸借対照表)=何を持っているか。C/F(キャッシュフロー計算書)=現金がどう動いたか。この3つの役割の違いさえ押さえれば、決算関連の記事はぐっと読みやすくなります。

決算はいつ発表される? — 年4回のスケジュールと探し方

決算は会社の成績発表です。日本の上場企業は3ヶ月ごと(四半期ごと)に成績を発表し、年度の締めくくりに本決算を出します。3月決算の会社なら、発表は5月ごろです。

3月決算の会社を例にすると、4〜6月の成績が第1四半期で発表は8月ごろ、9月までの上半期が第2四半期で発表は11月ごろ、12月までが第3四半期で発表は2月ごろ、そして1年分の本決算が5月ごろ。日本の上場企業は3月決算が最も多いため、この時期に決算発表が集中します。

発表資料はいろいろありますが、初心者が見るべきは決算短信の1ページ目だけ。ここに大事な数字がすべて要約されています。各社のIR(投資家向け情報)ページや、証券アプリから無料で見られます。

探し方は簡単です。証券アプリで銘柄を開き、「決算」や「適時開示」のタブをタップすれば決算短信のPDFが並びます。会社のウェブサイトなら、フッターの「IR情報」→「決算短信」。どちらも無料で、会員登録もいりません。

決算関連の資料と、初心者の読む優先度
資料の名前出るタイミング中身と使いどころ
決算短信決算発表の当日1ページ目に業績・通期予想・配当がすべて要約。初心者はまずこれだけでOK
決算説明資料発表当日〜数日後図やグラフで事業の中身を説明。読み物としていちばんわかりやすい
有価証券報告書本決算から3ヶ月以内最も詳しい正式文書。リスク情報まで載るが分量が多い

決算書の読み方 — 見るべきは3ヶ所だけ

決算短信の1ページ目を開いたら、次の3ヶ所だけを見てください。慣れれば1銘柄3分で終わります。

とくに②の進捗率は、四半期決算でいちばん役に立つ見方です。第1四半期なら25%前後、第2四半期なら50%前後、第3四半期なら75%前後が目安。ここから大きく下振れしていると、後で下方修正が出る可能性が高まります。

決算チェックの3ヶ所
  • ① 売上高と利益は前年より増えているか: 1ページ目のいちばん上にある表で、前年同期比の%を見るだけ。売上も営業利益もプラスなら順調です。売上は伸びているのに利益が減っているときは、コスト増や値下げが起きていないか確認しましょう。
  • ② 通期予想に対して順調か: 会社は年度初めに「今年はこれくらい稼ぐ予定」という予想を出しています。実績 ÷ 通期予想 で進捗率を計算し、四半期の目安と比べます。
  • ③ 配当予想は変わっていないか: 1ページ目に年間配当の予想が載っています。増えていれば(増配)自信の表れ、減っていれば(減配)要警戒です。据え置きなら平常運転。
進捗率の計算例通期の営業利益予想が100億円の会社で、第2四半期までの実績が55億円なら、進捗率は55%。目安の50%を超えているので順調です。逆に第2四半期で30億円しかなければ進捗30%で、通期予想の達成にはこの先ペースを大きく上げる必要がある、と読めます。

損益計算書の見方 — 5つの利益の違い

決算のニュースを読んでいると「営業利益」「経常利益」「純利益」と何種類も利益が出てきて混乱します。じつはこれ、上から順に引き算していくだけの話です。

売上高からスタートして、原価を引いて、人件費や広告費を引いて、利息や為替の損益を足し引きして、最後に一時的な損益と税金を引く。段階ごとに名前が付いているだけなので、順番さえわかれば怖くありません。

初心者がいちばん重視すべきは営業利益です。本業でどれだけ稼いだかを示す数字で、会社の実力がここに出ます。ニュースが「最終利益」と言うときは当期純利益のことで、これがPERROEの計算に使われる利益です。

損益計算書の5つの利益(上から順に引いていく)
利益の名前計算何がわかるか
売上総利益(粗利)売上高 − 売上原価商品そのものの儲け。粗利率が高いほど値付けの力が強い
営業利益売上総利益 − 販管費本業でどれだけ稼いだか。いちばん重視される利益
経常利益営業利益 ± 営業外損益利息や為替差損益まで含めた、平常運転の実力
税引前当期純利益経常利益 ± 特別損益工場売却や災害損失など、一時的な損益まで含めた利益
当期純利益税引前 − 法人税など最終的に株主のものになる利益。EPSやPERの元になる
純利益だけで判断しない「最終利益が過去最高」でも、その中身が土地やビルの売却益だったら本業は伸びていません。営業利益と当期純利益の伸び率が大きくズレているときは、特別損益に何があったかを確認してください。PERが不自然に低く見える原因にもなります。

貸借対照表とキャッシュフロー計算書 — ここだけ見ればOK

残り2枚も、初心者が見るところは1ヶ所ずつです。

貸借対照表で見るのは自己資本比率。全財産のうち、返さなくていいお金がどれだけの割合かを示します。目安は40%以上あれば安心、20%を下回ると借金への依存が大きめ、と考えておけば十分です。ただし銀行はビジネスの構造上この比率が一桁台になるのが普通なので、業種ごとの常識と比べてください。

キャッシュフロー計算書で見るのは営業キャッシュフロー。本業で現金がいくら入ってきたかの数字で、ここがプラスであることが大前提です。利益は黒字なのに営業キャッシュフローがマイナス、という状態が続く会社は要注意。売掛金や在庫だけが膨らんで、現金が入っていない可能性があります。いわゆる黒字倒産は、この形から起こります。

逆に言えば、営業利益が伸びていて、自己資本比率が40%前後あって、営業キャッシュフローがプラス。この3つが揃っていれば、初心者が財務面で心配することはほとんどありません。

3枚まとめた合格ライン①営業利益が前年より増えている ②自己資本比率が40%以上 ③営業キャッシュフローがプラス。この3つが揃っていれば、財務の健康診断はひとまず合格です。ROEが8%以上あれば、稼ぐ効率の面でも及第点になります。

決算で株価が動いても慌てない — 決算前後の注意点

決算直後は、良い数字でも「市場の期待ほどではなかった」という理由で株価が下がることがよくあります。短期の値動きは人気投票のようなもの。株価はすでに「これくらいの決算だろう」という予想を織り込んだ状態で決算日を迎えるので、答え合わせで上下しているだけです。

「業績予想の上方修正」は「予定より儲かりそうです」といううれしい発表で、株価が跳ねやすいポイント。逆に「下方修正」が続く会社は、自分が買った理由が崩れていないか見直しましょう。

長期のバリュー投資家が見るべきは「会社の稼ぐ力は維持されているか」だけです。3ヶ所チェックで問題がなければ、株価の乱高下は気にしなくて大丈夫。むしろ下がったら買い増しのチャンスかもしれません。

決算発表の日時は事前に公開されています。証券アプリの銘柄ページや会社のIRカレンダーで確認できるので、保有銘柄の発表日だけはカレンダーに入れておくと落ち着いて対応できます。

注意決算発表の直前に「良さそうだから」と駆け込みで買うのはギャンブルです。結果が良くても株価が下がることは普通にあります。発表を見てから、落ち着いて判断しても遅くありません。

初心者がやりがちな決算の読み間違い5つ

最後に、決算を読み始めたばかりの人がハマりやすいポイントを挙げます。心当たりがないか確認してみてください。

  • ① 前年比だけを見て進捗を見ない: 前年同期比プラスでも、通期予想に対する進捗が悪ければ後で下方修正が出ます。必ず2つセットで見ましょう。
  • ② 累計と単独を取り違える: 決算短信の数字は多くが期首からの累計です。第3四半期の数字は「4〜12月の合計」であって「10〜12月」ではありません。
  • ③ 一時的な利益を実力と勘違いする: 資産売却益で最終利益が膨らんだ年は、翌年に反動が出ます。営業利益の伸びと比べてください。
  • ④ 増収なのに減益なのを見逃す: 売上が伸びているのに利益が減っているのは、原材料高や値引き競争のサイン。放置すると数年かけて効いてきます。
  • ⑤ 決算の数字だけで判断する: 同時に発表される来期の会社予想のほうが、株価には大きく影響します。1ページ目の下部にある予想欄まで目を通しましょう。

まとめ

決算短信の1ページ目で「売上・利益の前年比」「通期予想への進捗」「配当予想」の3つを確認するだけで、初心者の決算チェックは十分です。年4回・1回3分の習慣が、あなたを「なんとなく投資」から卒業させてくれます。

もう一歩踏み込むなら、営業利益と当期純利益の違いを意識すること。そして自己資本比率40%以上、営業キャッシュフローがプラス、という2つの合格ラインを覚えておくこと。ここまでで、財務の危ない会社はほとんど避けられます。

決算で株価が下がっても、稼ぐ力が維持されているなら慌てる必要はありません。むしろPERが下がって割安になった、と受け取れる場面もあります。

まずは持っている銘柄、または気になっている銘柄の決算短信を1つ開いて、1ページ目の前年同期比の%だけ見てみてください。そこから始めれば十分です。

よくある質問

決算書の見方は、初心者はどこから読めばいいですか?

決算短信の1ページ目だけで構いません。ここに売上高・営業利益・当期純利益の前年同期比、通期の業績予想、年間配当予想がすべて要約されています。見るべきは3ヶ所で、①売上と利益が前年より増えているか ②通期予想に対する進捗率は目安どおりか ③配当予想が減らされていないか。慣れれば1銘柄3分で終わります。

損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の違いは何ですか?

見ている対象が違います。損益計算書(P/L)は1年でいくら稼いだかという成績表、貸借対照表(B/S)はいま何をどれだけ持っているかという財産目録、キャッシュフロー計算書(C/F)は現金が実際にどう出入りしたかの記録です。初心者はまず損益計算書の営業利益、次に貸借対照表の自己資本比率、キャッシュフロー計算書の営業キャッシュフローの3ヶ所だけ押さえれば十分です。

決算はいつ発表されますか?

上場企業は3ヶ月ごとに発表します。3月決算の会社なら、第1四半期が8月ごろ、第2四半期が11月ごろ、第3四半期が2月ごろ、本決算が5月ごろです。日本では3月決算の企業が最も多いため、この時期に発表が集中します。各社の正確な発表日は証券アプリの銘柄ページや、会社のIRカレンダーで事前に確認できます。

営業利益と経常利益の違いは何ですか?

営業利益は本業だけで稼いだ利益、経常利益はそこに本業以外の損益を足し引きした利益です。具体的には、営業利益に受取利息や配当収入、為替差損益、支払利息などの営業外損益を加減したものが経常利益になります。会社の実力を見るなら営業利益、借入が多い会社や海外売上の比率が高い会社の実態を見るなら経常利益もあわせて確認するのがおすすめです。

決算が良かったのに株価が下がるのはなぜですか?

株価は決算発表前から「これくらいの数字は出るだろう」という市場の予想を織り込んで動いているためです。実際の決算がその予想を上回らなければ、数字自体は好調でも売られます。逆に赤字決算でも「予想より傷が浅い」と判断されて上がることがあります。決算日の株価は答え合わせの結果であり、長期で持つなら稼ぐ力が維持されているかを見るほうが大切です。

決算書はどこで無料で見られますか?

会社の公式サイトのIR(投資家向け情報)ページと、証券会社のアプリの両方で無料公開されています。証券アプリなら銘柄ページの「決算」や「適時開示」のタブから決算短信のPDFを開けます。会社のサイトの場合はフッターのIR情報から決算短信のページへ。有価証券報告書はEDINETという金融庁のサイトでも誰でも閲覧でき、いずれも会員登録は不要です。

このテーマをもっと深めるなら

おすすめ本の一覧では、 お金の基礎から株式投資・ファイナンス・経営戦略まで26冊をジャンル別に紹介しています。

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