ROEとは? — 株主のお金を年何%で運用してくれているか
ROE(Return On Equity・自己資本利益率)は、「株主から預かったお金を使って、1年間でどれだけ利益を生み出したか」を表す数字です。読み方は「アール・オー・イー」。証券アプリの銘柄ページでは、PERやPBRと並んで載っています。
屋台にたとえてみましょう。100万円の元手でたこ焼き屋台を始めて、1年で10万円の利益が出たら、ROEは10%。同じ100万円で3万円しか稼げない屋台(ROE3%)より、明らかに商売上手ですよね。ROEは会社の「商売のうまさ」を測るモノサシです。
ここでいう元手が自己資本です。株主が出資したお金と、これまで稼いで社内にため込んできた利益の合計で、貸借対照表の純資産にほぼ相当します。つまりROEは、あなたが株主として預けたお金を、その会社が年何%で運用してくれているかを示す数字。投資信託の年利回りと同じ感覚で読めるのが、ROEのわかりやすいところです。
ROEの目安は何%? — 8%が合格ラインといわれる理由
日本では「8%」がひとつの合格ラインとしてよく使われます。これは2014年に経済産業省の報告書(通称・伊藤レポート)が「日本企業はまずROE8%を最低ラインとして目指すべき」と提言したことに由来します。
なぜ8%なのか。理由は株主資本コストにあります。株式は預金と違って元本が保証されないぶん、投資家は「これくらいのリターンがないと株なんて買わない」という最低ラインを持っています。日本企業の場合、その水準はおおむね7〜8%程度と考えられてきました。つまりROEが8%を下回る会社は、投資家が期待する最低ラインすら稼げていない、ということになります。
10%を超えれば優秀、15%超なら世界レベル。逆に5%を切る状態が何年も続いている会社は、株主のお金をうまく活かせていないと言わざるを得ません。ただし業種差もあり、巨額の設備を抱える電力・鉄道・鉄鋼などは構造的にROEが低めに出ます。ここでも比較は同業種のなかで行うのが基本です。
| ROEの水準 | 評価 | どう考えるか |
|---|---|---|
| 3%未満 | 要注意 | 株主のお金がほとんど増えていない。事業構造そのものに問題がある可能性 |
| 3〜8% | 平均以下 | 投資家が期待する最低ラインに届いていない。改善策が出ているか確認したい |
| 8〜10% | 合格ライン | 伊藤レポートが掲げた最低ライン。ひとまずクリアしている水準 |
| 10〜15% | 優秀 | 強いブランドや高いシェアなど、なにか明確な強みを持っていることが多い |
| 15%超 | 世界レベル | 本当に強いのか、借金で膨らませているのかを必ず確認する |
ROEが高い理由は3つに分けられる — デュポン分解の考え方
「この会社はなぜROEが高いのか?」を知りたいときに便利なのが、デュポン分解と呼ばれる考え方です。難しそうな名前ですが、やっていることは単純で、ROEを3つのかけ算に分けるだけです。
屋台の話に戻すと、①1個売るごとの儲けが大きい(利益率が高い)、②屋台をフル回転させてたくさん売る(回転率が高い)、③借りたお金で屋台を2台に増やす(レバレッジをかける)。この3つのどれかを上げれば、元手に対する儲けは増えます。ROEもまったく同じ構造です。
この分解が効くのは、高ROEの中身をひと目で判定できるからです。①と②で稼いでいる会社は、商品が強い、あるいは経営が効率的という「本物の強み」を持っています。一方、③だけでROEを持ち上げている会社は、借金を増やしただけかもしれません。
- ① 売上高純利益率(儲けの厚み): 売上100億円で純利益10億円なら10%。ブランド力や特許があって値引きしなくても売れる会社は、ここが高くなります。
- ② 総資産回転率(資産の使い回し): 総資産100億円で売上200億円なら2回転。少ない設備で何度も売り上げる小売やサービス業が得意な領域です。
- ③ 財務レバレッジ(借金の使い方): 総資産200億円・自己資本100億円なら2倍。借金を増やすほど大きくなり、ROEを機械的に押し上げます。
ROEのからくりに注意 — 借金を増やすだけでも上がる
ROEにはひとつ、知っておくべきからくりがあります。それは「借金を増やすとROEが高く見える」こと。デュポン分解の③財務レバレッジが、そのまま数字を持ち上げてしまうためです。
ROEの分母は自己資本(株主のお金)だけなので、借金でお金を調達して利益を増やせば、自己資本を増やさずにROEを吊り上げられるのです。極端な話、自己資本1,000億円・純利益100億円(ROE10%)の会社が、自社株買いで自己資本を500億円まで減らせば、利益が同じでもROEは20%になります。稼ぐ力はまったく変わっていないのに、です。
だからROEが異様に高い(30%超など)会社を見つけたら、自己資本比率(総資産のうち自己資本の割合)も必ずチェックしましょう。自己資本比率が10〜20%と極端に低いなら、そのROEは借金のレバレッジで演出されたものかもしれません。
レバレッジが怖いのは、悪いほうにも同じ倍率で効くことです。借金の多い会社は、景気後退で利益が半分になると株主の取り分は一気に削られ、金利が上がれば利払いだけで利益が飛びます。高ROEの裏に高い借金があるなら、それは「強い会社」ではなく「揺れやすい会社」です。
ROEとROAの違い — 借金ぶんを含めるかどうか
ROEとよく並べて出てくるのがROA(Return On Assets・総資産利益率)です。この2つの違いは、分母に借金を含めるかどうか、それだけです。
ROEの分母は自己資本(株主のお金)だけ。ROAの分母は総資産(株主のお金+借金)。つまりROAは、借りてきたお金も含めた全部の資産を使ってどれだけ稼いだかを見ます。借金でかさ上げできないぶん、ROAのほうが会社の素の実力に近い数字だと言えます。
使い分けはシンプルで、ROEが高いのにROAが低い会社は、レバレッジで数字を作っているサイン。ROEもROAも高い会社は、本当に商売がうまい会社です。ROEを見たら、その隣のROAも一緒に見る癖をつけてください。
| 指標 | 分母 | 何がわかる? |
|---|---|---|
| ROE | 自己資本(株主のお金) | 株主の立場から見た運用利回り。借金を増やすと機械的に上がる |
| ROA | 総資産(自己資本+負債) | 借金も含めた資産全体の効率。5%以上あれば良好とされることが多い |
ROEとPBR・PERの関係 — 割安株探しの本丸
ROEが割安株投資でこれほど重視されるのは、PBRと直接つながっているからです。PBRはPERとROEのかけ算と一致します。
つまり、ROEが低い会社はPBRも低くなるのが計算上の必然です。ROE5%の会社にPER12倍がつけば、PBRは0.6倍。「PBR1倍割れの会社が多い」ことと「日本企業のROEが低い」ことは、同じ現象を別の角度から見ているにすぎません。
だからPBR1倍割れの銘柄を見つけたときの分かれ道はここです。ROEが低いままなら、それは市場が正しく評価しているだけの万年割安株。ROEが8%以上あるのにPBRが1倍を割っているなら、稼ぐ力があるのに見過ごされている候補になります。ROEは、安いだけの株をつかまないための最強のフィルターなのです。
配当利回りを見るときにも同じことが言えます。ROEが高い会社は稼いだ利益から無理なく配当を出せますが、ROEが低いまま高配当を続けている会社は、利益ではなくため込んだ財産を取り崩している可能性があります。
実際の使い方 — ROEチェックの3ステップ
ROEを実戦で使うときは、次の3ステップで見ればほぼ間違いません。証券アプリの銘柄ページか、会社の決算短信の1ページ目で確認できます。とくに大事なのは②の継続性で、1年だけのROEは資産売却の特別利益ひとつで簡単に跳ね上がります。
- ① 8%を超えているか: まずは合格ラインのクリアを確認。同業他社3〜5社と並べて、業界内での位置も見ておきます。
- ② 過去5年ぶん並べる: 毎年8%以上を保っているか。上下に激しく振れているなら、一時的な利益が混ざっていないか決算資料で確認します。
- ③ 自己資本比率とROAを添える: 自己資本比率40%以上、ROA5%以上なら、そのROEは借金ではなく実力で作られたものと考えてよいでしょう。
まとめ
ROEは株主のお金でどれだけ稼げるかを示す「商売のうまさ」の指標です。8%が合格ライン、10%超で優秀、15%超なら世界レベル。8%という数字は、株主が株式投資に期待する最低リターン(株主資本コスト)から来ています。
ROEが高い理由は、利益率・資産回転率・財務レバレッジの3つに分解できます。前の2つで稼いでいる会社は本物、3つめだけで数字を作っている会社は借金頼みです。だから高ROEを見つけたら、自己資本比率とROAをセットで確認してください。
そしてPBR = PER × ROE。ROEを味方につければ、「安いだけの株」と「安くて、ちゃんと稼げる会社」を見分けられるようになります。まずは気になる銘柄のROEを、過去5年ぶん並べてみるところから始めてみてください。
よくある質問
ROEは何%あれば良い会社といえますか?
日本株では8%がひとつの合格ラインです。2014年の伊藤レポートが最低ラインとして掲げた水準で、株主が株式投資に期待する最低リターン(株主資本コスト)がおおむね7〜8%とされることが根拠になっています。10%を超えれば優秀、15%超なら世界レベル。ただし電力や鉄道のように巨額の設備を抱える業種は構造的に低く出るため、同業他社と比べて判断してください。
ROEが高い会社はなぜ高いのですか?
理由は3つに分解できます。①1つ売るごとの利益が厚い(売上高純利益率が高い)、②少ない資産で何度も売り上げる(総資産回転率が高い)、③借金を活用して元手を膨らませている(財務レバレッジが高い)。長期にわたって高ROEを保つ会社は、たいてい①か②に理由があり、値上げしても客が離れないブランド力や高いシェアを持っています。
ROEとROAの違いは何ですか?
分母が違います。ROEの分母は自己資本(株主のお金)だけ、ROAの分母は総資産(自己資本+借金)です。そのためROEは借金を増やすと機械的に上がりますが、ROAは上がりません。ROAは会社の素の実力に近く、5%以上あれば良好とされます。ROEが高いのにROAが低い会社は、借金のレバレッジで数字を作っている可能性が高いと考えてください。
ROEが高すぎる会社は危険ですか?
中身の確認が必要です。ROEが30%を超えているのに自己資本比率が20%を切っているような会社は、借金を増やして自己資本を薄くすることでROEを押し上げている可能性があります。レバレッジは利益が減ったときや金利が上がったときに逆方向へ同じ倍率で効くため、業績が揺れやすくなります。高ROEを見たら、自己資本比率40%以上を目安に財務の健全性をあわせて確認してください。
ROEとPBRにはどんな関係がありますか?
PBR = PER × ROE という式で直接つながっています(ROEは小数で計算)。そのためROEが低い会社はPBRも低くなるのが計算上の必然で、PBR1倍割れが多いことと日本企業のROEが低いことは同じ現象の裏表です。PBRが1倍を割っていてもROEが8%以上ある会社は、稼ぐ力があるのに見過ごされている候補になります。
ROEはどこで確認できますか?
証券会社のアプリやサイトの銘柄ページに、PERやPBRと並んで表示されています。より正確に見たい場合は、会社が公表する決算短信の1ページ目や、決算説明資料の財務ハイライトに過去数年ぶんが載っています。1年だけの数字は資産売却などの特別利益で簡単に跳ね上がるため、過去5年ぶんを並べて安定しているかを確認するのがおすすめです。
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