暴落は「必ず来る」と知っておく

2008年のリーマン・ショックで、日経平均は1年で約4割下落しました。2020年のコロナ・ショックでは約1ヶ月で3割下落。そして2024年8月5日には、日経平均が1日で4,451円安(-12.4%)という過去最大の下げ幅を記録しました。

つまり10年も投資を続ければ、資産が3割減る日を高確率で経験します。これは失敗ではなく、株式投資に最初から組み込まれている仕様です。株式は「値下がりのリスクを引き受ける代わりに、預金より高いリターンをもらう」商品なので、下落は料金の後払いのようなものだと思ってください。

そしてもうひとつの歴史的事実——これらの暴落はすべて、その後回復しています。2024年8月の暴落にいたっては、翌日に3,217円高という史上最大の上げ幅で反発しました。パニックの底で売った人だけが、損失を確定させたのです。

だから暴落対策の本質は、「暴落を当てること」ではなく「暴落が来ても売らずに済む状態を、平時に作っておくこと」です。予測ではなく準備。ここを間違えないでください。

過去の暴落の下落率と回復期間 — 3大暴落を並べて見る

怖いものの正体は、たいてい「よく知らないこと」です。過去の大きな暴落がどれくらい下げて、どれくらいで戻ったのかを一度見ておくだけで、次の暴落の日の落ち着きがまるで変わります。

数字はどの高値・安値を起点にするかで変わるので、ここではおおまかな幅として捉えてください。大事なのは小数点以下ではなく、桁の感覚です。

3つを並べると、共通点が見えてきます。① 下げは速く、戻りは遅い。1ヶ月で3割落ちても、戻すには年単位かかる。② 底では必ず「今回は違う、もう戻らない」と言われる。③ そして結局、時間を長く取れた人だけが回復を受け取ってきた。この3点です。

過去の主な暴落の下落率と、高値を取り戻すまでの期間(いずれもおおよその目安です)
暴落高値から底までの下落率底までにかかった期間高値を取り戻すまで
ITバブル崩壊(2000〜2003年)日経平均でおおむね-60%前後。米国のハイテク株はさらに大きく下げました約2年半かけて、じりじりと下げ続けました10年をはるかに超えました。日経平均が2000年の水準に戻るのは、はるか先のことでした
リーマン・ショック(2007〜2009年)日経平均でおおむね-60%前後、米国の主要指数でおおむね-50%台約1年半米国株はおおむね5年前後。日本株はそれよりかなり長くかかりました
コロナ・ショック(2020年)日米ともおおむね-30%台わずか1ヶ月ほど。史上まれに見る速さでした米国株はおおむね半年、日本株もおおむね1年以内
2024年8月の急落日経平均が数週間でおおむね-25%前後数週間。1日で-12.4%という日を含みますおおむね数ヶ月から1年程度
「必ず戻る」と保証されているわけではない日経平均は1989年末につけた38,915円という高値を取り戻すのに、30年以上かかりました。バブル最高値で全財産を一括投資した人にとって、これは人生の大半に相当する時間です。だから「いつか戻る」を信じるのではなく、①1つの国・1つの指数に全部を賭けない ②一括ではなく時期を分けて買う、という設計で守ってください。

暴落時にやってはいけないこと — 6つのチェックリスト

暴落の日に必要なのは、賢い判断ではなく「余計なことをしない」ことです。次のリストを、いまのうちにスクリーンショットでも撮っておいてください。暴落のさなかに読み返す用です。

暴落時のNG行動チェックリスト
  • ① 狼狽売り: 暴落の底は、あとから振り返れば例外なく絶好の買い場でした。恐怖のピークで売るのは、バーゲンセールの初日に商品を返品するようなものです
  • ② 全力ナンピン: 逆に「チャンスだ!」と手持ち資金を初日に全部つぎ込むのも危険です。暴落が数ヶ月続くこともあり、底がどこかは誰にもわかりません
  • ③ 株価とSNSへの張り付き: 暴落中のSNSは恐怖と煽りの増幅装置です。見れば見るほど正常な判断ができなくなります。アプリを閉じて散歩に行くのは、立派な投資戦略です
  • ④ 信用取引やレバレッジ商品で取り返そうとする: 減った資産を一気に戻したくなりますが、下げが続けば追証で強制決済され、回復を待つ権利ごと失います。暴落時にいちばん人を退場させるのがこれです
  • ⑤ 積立の停止・解約: 下がっている月こそ、同じ金額でたくさんの口数を仕込める月です。ここで止めるのは、セール期間だけ買い物をやめるのと同じです
  • ⑥ 生活防衛資金に手をつけて買う: 「こんな安値は二度とない」と生活費まで投じると、次の下げで生活が回らなくなり、いちばん安いところで売る羽目になります
いちばん危ないのは「退場」暴落で全部売って市場を去り、回復してから恐る恐る戻る——これを繰り返すと「高く買って安く売る」を繰り返すことになります。市場に居続けた人が、結局いちばん報われてきました。

暴落を味方にする5つの準備 — 対策は平時にしかできない

暴落が来てから対策を考えるのは、火事になってから消火器を買いに行くようなものです。次の5つは、相場が穏やかな今日この日にこそ手をつけてください。

① 生活防衛資金を別口座に分ける: 生活費の6ヶ月分、月25万円で暮らしているなら150万円。これを証券口座とは別の銀行に置いておきます。この150万円があるだけで、暴落は「怖い出来事」から「見ているだけのニュース」に変わります。

② 現金の余力を残しておく: 常にフルインベストメント(全額投資)だと、バーゲンで買うお金がありません。投資資金の2〜3割を現金で持っておくと、暴落が「チャンス」に見えるようになります。

③ 買いたい銘柄リストをつくっておく: 「いい会社だけど、いまは高いんだよな」という株をリスト化して、買いたい値段まで決めておく。暴落はそのリストの株が一斉に希望価格まで下りてくる日です。冷静なときの判断を、パニックの日に実行するだけ。

④ 積立は絶対に止めない: インデックス積立をしている人にとって、暴落は「同じ金額でたくさんの口数を仕込める月」。止めるどころか、積立が一番働いてくれる場面です。

⑤ 自分のルールを紙に書く: 「-20%まで下げたら待機資金の2割を投入」「積立は何があっても継続」など、行動を先に決めて紙に書き、目に入るところに貼っておきます。暴落の日は、その紙を実行するだけの日になります。

ミスター・マーケットを思い出す暴落は、気分屋のミスター・マーケットが絶望して投げ売りしている状態。彼の気分に付き合う義務はありません。「会社の中身は変わったか?」——問いはいつもこれだけです。

暴落が来たときの買い方 — 段階的に投入する設計図

「暴落は買い場」とよく言われますが、いつが底かは誰にもわかりません。だから底を当てにいくのではなく、下落率ごとに買う金額を先に割り振っておきます。これなら、どこが底でも「そこそこ良い平均取得単価」になります。

たとえば待機資金が100万円あるとします。高値からの下落率に応じて、次のように4回に分けて投入する設計です。もっと下がったら、より多く買える形にしておくのがポイントです。

この表のとおりに動けば、-20%までしか下がらなくても40万円は仕込めますし、-40%まで行っても最後の30万円が残っています。「底で全額」を狙わないぶん、どのシナリオでも致命傷を避けられます。

待機資金100万円を、下落率ごとに分けて投入する例
高値からの下落率投入する金額そのときの考え方
-10%20万円よくある調整局面。年に何度も起きる水準なので、ここで使い切らない
-20%20万円一般に「弱気相場入り」と呼ばれる水準。ニュースが騒がしくなり始めます
-30%30万円コロナ・ショック級。過去の大暴落の平均的なゾーンです
-40%以上30万円10年に一度クラス。ここまで資金を残せた人だけが手にできる場面です
積立が効いている実感を口数で見る毎月3万円の積立を続けているとします。基準価額が10,000円のときは3万口買えますが、7,000円に下がれば約4.3万口。同じ3万円で1.4倍の口数が手に入ります。評価額は減っていても、持っている口数は毎月確実に増え続けている——暴落中はこちらの数字を見てください。

インデックス積立と個別株では、暴落時の対応が違う

同じ暴落でも、持っているものによってやるべきことは変わります。ここを混ぜて考えると混乱します。

インデックス投資(全世界株式やS&P500などの投信)の場合、基本は「何もしない、積立を続ける」の一択です。指数は中身の銘柄が定期的に入れ替わる仕組みなので、個別企業が倒れても指数そのものが消えることはありません。評価額を見る回数を減らし、積立設定を触らないこと。それが最大の暴落対策です。

個別株の場合は、ひと手間必要です。下がった原因が「市場全体のせい」なのか「その会社のせい」なのかを切り分けてください。日経平均が-25%のときに自分の株も-25%なら市場のせい。日経平均が-25%なのにその株だけ-50%なら、会社側に何かある可能性が高いです。

切り分けたら、財務を確認します。自己資本比率が高く、有利子負債が少なく、手元の現金が厚い会社は不況を耐えられます。逆に借金が多く赤字が続いている会社は、暴落が長引くと本当に危なくなります。ここで見るのは株価ではなく決算書です。

暴落中に見るべき3つの数字株価チャートではなく、①自己資本比率(高いほど不況に強い) ②営業利益が黒字を保てているか ③配当を出し続ける体力があるか。この3つが無事なら、株価がいくら下がっても「安く買えるだけ」です。

まとめ

暴落は必ず来て、これまでは回復してきました。ただし回復にかかった時間は、コロナ・ショックの半年からITバブル崩壊の10年超まで、10倍以上の開きがあります。だから「いつか戻る」に賭けるのではなく、戻るまで待てる設計にしておくことが大事です。

やってはいけないのは、狼狽売り・全力ナンピン・株価への張り付き・レバレッジでの反撃・積立の停止・生活防衛資金の投入。この6つを避けるだけで、暴落の被害は大幅に減ります。

そして準備は平時にしかできません。生活防衛資金を分け、投資資金の2〜3割を現金で持ち、買いたい銘柄リストを作り、下落率ごとの投入計画を紙に書いておく。

準備した人にとってだけ、暴落は数年に一度のバーゲンセールになります。まずは今日、生活費の6ヶ月分がどこにあるかを確認するところから始めてみてください。

よくある質問

株価が暴落したらどうすればいいですか?

基本は「売らない・積立を止めない・見る回数を減らす」の3つです。過去の暴落はいずれも時間をかけて回復しており、恐怖のピークで売った人だけが損失を確定させてきました。買った理由が崩れていない銘柄はそのまま保有し、待機資金がある場合も一度に投じず、下落率ごとに分けて投入すると失敗しにくくなります。

暴落はどれくらいの頻度で起きますか?

10%程度の調整は年に1回前後、20%を超える下落は数年に1回、30%を超える大暴落はおおむね10年に1回程度のペースで起きてきました。つまり10年投資を続ければ、資産が3割減る日はほぼ確実に経験します。これは異常事態ではなく株式投資の標準仕様なので、あらかじめ織り込んだ資産配分にしておくことが大切です。

暴落から回復するまでどれくらいかかりますか?

ケースによって大きく違います。2020年のコロナ・ショックは米国株でおおむね半年で高値を回復した一方、リーマン・ショックはおおむね5年前後、ITバブル崩壊の日本株は10年を大きく超えました。日経平均が1989年の高値を取り戻すには30年以上かかっています。回復期間は数ヶ月から数十年まで幅があると考え、当面使う予定のないお金だけで投資してください。

暴落時に積立は止めるべきですか?

止めないのが基本です。価格が下がっている月は、同じ金額でより多くの口数を買えるため、積立の効果がいちばん発揮される場面だからです。毎月3万円の積立なら、基準価額が10,000円のとき3万口、7,000円に下がれば約4.3万口を購入できます。評価額ではなく、積み上がっていく口数のほうを見るようにしてください。

暴落に備えて現金はどれくらい持っておくべきですか?

生活防衛資金として生活費の6ヶ月分、それとは別に投資資金の2〜3割を現金で持つのが一つの目安です。月25万円で暮らしているなら生活防衛資金は約150万円。これを証券口座とは別の銀行に置いておくと、暴落時に売らずに済みます。投資用の現金余力は、暴落を「怖い出来事」から「安く買える機会」に変えるための弾になります。

暴落を事前に予測することはできますか?

できません。プロの機関投資家も含めて、暴落のタイミングを継続的に当て続けた人は確認されていません。暴落は予測ではなく準備で対応するものです。生活防衛資金を確保し、資産を株式・債券・現金に分散し、下落率ごとの買い増し計画を先に決めておく。この3つがあれば、いつ来ても対応できます。

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