なぜ「売り」はこんなに難しいのか
人間には「利益はさっさと確保したいのに、損は認めたくない」という強いクセがあります。行動経済学では、損の痛みは同じ額の利益の喜びの2倍以上と言われるほど。
その結果どうなるか。ちょっと上がった株はすぐ売って小さな利益を確定し、下がった株は「戻るまで待とう」と持ち続けて損を膨らませる。利小損大——投資で負ける人の典型パターンです。これはセンスの問題ではなく人間の仕様なので、感覚に任せず、先にルールを決めておくしかありません。
売っていいのは3つの場面だけ
① 買った理由が崩れたとき: 「割安で業績も安定しているから」買った会社の業績が構造的に悪化した、不祥事で稼ぐ力そのものが傷ついた——前提が壊れたら、株価がいくらであろうと売り時です。
② 明らかに割高になったとき: PBR0.7倍で買った株が人気化してPBR2倍になったなら、バリュー投資としての役目は完了。「もっと上がるかも」は欲であって根拠ではありません。
③ もっと良い投資先が見つかったとき: 手持ちの株より明確に割安で優良な株が見つかったら、乗り換えは合理的な判断です。
逆に言えば、この3つ以外——「なんとなく不安」「市場全体が下がっている」「含み損が気持ち悪い」は、売る理由になりません。
損切りルールの作り方
とはいえ「理由が崩れたか」の判断は初心者には難しいもの。そこで、機械的な保険をかけておくことをおすすめします。「買値から20%下がったら、理由を問わず一度売って考え直す」のような値幅ルールです。
20%という数字に深い意味はありません。大事なのは、買う前に決めて、例外をつくらないこと。下がってから考えると、人間は必ず「もう少し待とう」を選んでしまいます。
損切りは負けではなく、「判断が間違っていたと認めて、資金を次のチャンスに回す」ための撤退作戦です。10回の投資で2〜3回間違えるのはプロでも普通のこと。小さく間違えて大きく当てるための技術が損切りです。
まとめ
売っていいのは「理由が崩れた」「明らかに割高」「より良い投資先」の3場面だけ。感覚で売らず、買う前に損切りラインを決め、買った理由をメモしておく。売りの技術は、買いの技術より先に身につける価値があります。