決算書とは? — 会社が年4回出す「健康診断書」
決算書(財務諸表)は、会社が「この1年(または3ヶ月)でこれだけ稼ぎ、いまこれだけの財産があり、現金はこう動きました」と報告する公式書類です。上場企業は法律とルールに基づいて、これを年4回公開しています。
人間でいえば健康診断書。見た目(株価)がどんなに元気そうでも、中身の数値に異常があれば要注意——それを確かめるための書類です。血圧や血糖値の代わりに、売上高・利益・借金・現金といった数字が並んでいると思ってください。
読む場所は3つあります。①各社の公式サイトにあるIR(投資家向け情報)ページ、②証券アプリの銘柄ページにある「業績」「財務」タブ、③金融庁のEDINETという公開システム。どれも無料で、その会社の株を持っていなくても、証券口座がなくても読めます。
決算書の中心になるのが「財務三表」と呼ばれる3枚。損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CF)です。この記事では3枚の役割分担と関係だけをつかみます。1枚ずつの細かい読み方は、それぞれの記事に譲ります。
財務三表とは? — PL・BS・CFの役割分担を1枚の表で
3枚がややこしく感じるのは、それぞれが「別のもの」を測っているからです。同じ会社を、違う角度から3回撮影していると考えてください。
いちばん大事な違いは時間の扱い方です。PLとCFは「4月1日から翌年3月31日までの1年間でどう動いたか」を表す期間の書類。いっぽうBSは「3月31日の時点でどうなっているか」を表す一時点の書類です。動画がPLとCF、写真がBS、と覚えておくと混同しません。
そしてPLとCFの違いは、測っているものが利益か現金かという点。同じ1年間でも、帳簿上の利益と実際に増えた現金は一致しないので、両方を並べる必要があります。
| 書類 | 何を表す? | たとえると | 代表的な数字 |
|---|---|---|---|
| 損益計算書(PL) | 1年間の動き。いくら売って、いくら使って、いくら儲けたか | テストの成績表 | 売上高・営業利益・当期純利益 |
| 貸借対照表(BS) | 決算日という一時点の残高。いま何を持ち、いくら借りているか | 決算日に撮ったスナップ写真 | 総資産・純資産・自己資本比率 |
| キャッシュフロー計算書(CF) | 1年間で現金が実際にいくら入り、いくら出ていったか | 銀行口座の入出金明細 | 営業CF・投資CF・財務CF |
損益計算書(PL)は「1年間の動き」 — 期間の成績表
損益計算書(PL: Profit and Loss statement)は、1年間の成績表です。いちばん上に売上高が置かれ、そこから費用を順番に引き算しながら下に降りていく階段の形をしています。
階段の途中には、売上総利益(粗利)・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益という5つの利益が順番に現れます。たとえば売上高1,000億円の会社なら、原価を引いて粗利400億円、販管費を引いて営業利益100億円、最後に税金を払って純利益67億円、という具合です。
投資家がいちばん重視するのは、本業の実力を表す営業利益。ニュースで「増収増益」と言われるのは、売上高と利益がそろって前年より増えたという意味です。5段階の階段をどう降りるのか、営業利益と経常利益は何が違うのかは、損益計算書の読み方の記事で数字入りの表にまとめています。
貸借対照表(BS)は「ある一時点の残高」 — 決算日の財産リスト
貸借対照表(BS: Balance Sheet)は、決算日という1日を切り取った財産リストです。左側に資産(持っているもの)、右側に負債(返す必要のあるお金)と純資産(返さなくていい自前のお金)が並びます。
右側は「お金をどう集めたか」、左側は「集めたお金がいま何に姿を変えているか」。集めたお金は必ずどこかにあるので、左右の合計は1円単位で必ず一致します。だからバランスシートと呼ばれます。マイホームを頭金1,500万円+住宅ローン3,500万円で5,000万円分買った、という形とまったく同じ構造です。
ここで見るのは会社の頑丈さです。総資産のうち純資産が何%かを表す自己資本比率が40%以上あれば、事業会社としてはまず安心とされます。5つのブロックの中身や、流動と固定の分け方は、貸借対照表の読み方の記事で表にして解説しています。
キャッシュフロー計算書(CF)は「現金の出入り」
キャッシュフロー計算書(CF: Cash Flow statement)は、1年間で現金がいくら入って、いくら出ていったかだけを記録した書類です。銀行口座の入出金明細をイメージしてください。
なぜPLと別に必要なのかというと、利益と現金は必ずズレるからです。商品を掛け売り(ツケ)で売れば、売上と利益は計上されても現金はまだ入ってきません。逆に工場を建てて現金が一気に出ていっても、費用としては減価償却で数年に分けて計上されます。
CFは現金の動きを営業CF・投資CF・財務CFの3つに分けて記録します。ざっくり言えば、本業で稼いだ現金が営業CF、未来のために使った現金が投資CF、借入や配当など資金のやりくりが財務CF。この3つのプラスマイナスの組み合わせから会社の状況を読み解く方法は、キャッシュフロー計算書の読み方の記事にまとめています。
3枚はどうつながっている? — つなぎ目に嘘は隠せない
三表はバラバラの書類ではなく、1つの物語としてつながっています。PLで稼いだ純利益は、配当に回した分を除いてBSの純資産に積み上がる。そしてPLの利益が本当に現金として入ってきたかをCFが検証する——この循環です。
つながっているということは、1枚だけを都合よく良く見せることができないということでもあります。たとえば「PLは黒字なのに営業CFがマイナス」なら、売上の代金を回収できていないか、在庫が積み上がっている疑いがあります。「BSの純資産が毎年増えている」なら、稼いだ利益をきちんと蓄えてきた証拠です。
- ① PL → BS: 1年で稼いだ当期純利益から配当を引いた残りが、BSの純資産(利益剰余金)に積み上がります。純利益67億円のうち20億円を配当に回したなら、純資産は47億円増える計算です。
- ② PL → CF: 営業キャッシュフローは税引前の利益からスタートし、そこに現金が出ていかない減価償却費を足し戻し、売掛金や在庫の増減を調整して現金ベースに直します。PLとCFはこの入口でつながっています。
- ③ CF → BS: 営業CF・投資CF・財務CFを合計した現金の増減が、そのままBSの「現金及び預金」の増減になります。CFの最終行とBSの現金は必ず一致します。
決算書の読み方 — 初心者が10分で終わらせる4ステップ
全部を読む必要はまったくありません。証券アプリを開いて、次の4つだけを順番に確認してください。慣れれば1銘柄10分もかかりません。
大事なのは、1年分だけを見ないこと。どの数字も5年分を並べて、右肩上がりか、横ばいか、落ちているかという「向き」で見ると、その会社の体質が見えてきます。
- ① 決算短信の1ページ目: 売上高と営業利益が前年より増えているか。両方プラスなら増収増益です。
- ② PLで利益率: 営業利益 ÷ 売上高。10%以上あればおおむね優秀な部類です。売上が伸びていても利益率が落ちているなら、値引きや原価高の可能性があります。
- ③ BSで自己資本比率: 純資産 ÷ 総資産。40%以上なら財務は安心圏。10%台なら借金頼みの体質です。
- ④ CFで営業CFがプラスか: ここがマイナスなら、いくら黒字でも一度立ち止まってください。本業が現金を生めていないサインです。
まとめ
決算書は会社の健康診断書で、中心は財務三表。PLは1年間の動きを表す成績表、BSはある一時点の残高を写したスナップ写真、CFは現金の出入りを記録した明細です。
3枚はつながっていて、PLの利益はBSの純資産に積み上がり、CFがその利益が本物かを検証します。だから1枚だけでは隠せることも、3枚を突き合わせると見えてきます。
まずは気になる会社の決算短信を開いて、増収増益か・自己資本比率は何%か・営業CFはプラスか、この3点だけ確認してみてください。そのうえで、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の各記事で1枚ずつ深掘りしていきましょう。
よくある質問
財務三表とは何ですか?
損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CF)の3つを指します。PLは1年間でいくら儲けたかという期間の動き、BSは決算日時点で何を持ち何を借りているかという一時点の残高、CFは1年間で現金がいくら出入りしたかを表します。同じ会社を3つの角度から撮影したもので、3枚そろって初めて全体像がわかります。
決算書はどこで見られますか?無料ですか?
すべて無料で見られます。いちばん手軽なのは証券アプリの銘柄ページにある業績・財務タブで、過去5年分の売上高や利益がグラフで確認できます。より詳しく見たい場合は、その会社の公式サイトのIR(投資家向け情報)ページか、金融庁が運営するEDINETで決算短信・有価証券報告書の原本が読めます。証券口座がなくても閲覧できます。
損益計算書と貸借対照表の違いは何ですか?
測っている時間が違います。損益計算書(PL)は1年間という期間の動きを表し、その期間にいくら売っていくら儲けたかを示します。貸借対照表(BS)は決算日という一時点の残高を表し、その瞬間に何を持ち、いくら借りているかを示します。PLが動画、BSが写真と考えるとわかりやすいです。PLで稼いだ利益は、配当を除いてBSの純資産に積み上がっていきます。
決算短信と有価証券報告書はどう違いますか?
決算短信は決算発表当日に出る速報で、数ページから数十ページ。1ページ目に売上高・営業利益・経常利益・純利益と前年比がまとまっているため、投資家が最初に見るのはこちらです。有価証券報告書は決算から3ヶ月以内に提出される法定の詳細版で、事業リスクや役員報酬まで載っています。速さの短信、詳しさの有報、と覚えておきましょう。
簿記の知識がないと決算書は読めませんか?
投資判断に使うだけなら簿記の資格は不要です。仕訳を切る側と、できあがった数字を読む側では必要な知識がまったく違います。読む側に必要なのは、売上高・営業利益・純資産・営業キャッシュフローといった10個ほどの用語の意味と、それが前年より増えているかを見る習慣だけ。まずは1社を5年分並べて眺めるところから始めれば十分です。
決算書は年に何回発表されますか?
上場企業は年4回です。3ヶ月ごとに第1四半期・第2四半期(中間)・第3四半期・通期(本決算)の順で発表されます。ただしキャッシュフロー計算書は四半期ごとの開示が省略されることがあり、中間と通期でしか出さない会社もあります。年間の総まとめは本決算なので、じっくり読むなら本決算の資料を選ぶのが効率的です。
このテーマをもっと深めるなら
おすすめ本の一覧では、 お金の基礎から株式投資・ファイナンス・経営戦略まで26冊をジャンル別に紹介しています。