損益計算書(PL)とは? — 1年間の成績表

損益計算書(PL: Profit and Loss statement)は、会社が1年間(四半期なら3ヶ月間)でいくら売って、いくら使って、いくら儲けたかを示す書類です。読み方は「そんえきけいさんしょ」、現場では「ピーエル」と呼ばれます。財務三表のうち、期間の動きを表す1枚がこれです。

形はとてもシンプルで、一番上の売上高から始まり、費用を順番に引き算しながら、最後の当期純利益まで降りていく階段になっています。

レモネード屋さんで考えましょう。売上(お客さんからもらったお金)から、まずレモンと砂糖代(原価)を引く。次に屋台のレンタル代やチラシ代(販管費)を引く。銀行への利息を払い、最後に税金を納めて、残ったのがあなたの取り分。PLはこの流れを会社サイズにしたものです。

つまり階段の途中には、性格の違う5つの利益が順番に現れます。この5つの意味さえ押さえれば、PLは一気に読めるようになります。

売上高 −原価→ 売上総利益 −販管費→ 営業利益 −営業外損益→ 経常利益 −特別損益→ 税引前当期純利益 −税金→ 当期純利益

5つの利益の階段 — 売上高1,000億円の会社で追いかける

言葉だけだと頭に入らないので、架空の会社「サンプル製作所」の数字で階段を降りてみます。売上高1,000億円、最終的に手元に残る当期純利益は67億円という会社です。

見てのとおり、1,000億円売っても株主の取り分として残るのは67億円、率にして6.7%だけ。会社の利益とはこれくらい薄いものだ、という感覚をまず持っておくと、ニュースの数字の受け取り方が変わります。

サンプル製作所の損益計算書(売上高1,000億円の会社)
階段項目金額直前で差し引いたもの
スタート売上高1,000億円—(商売の規模そのもの)
1段目売上総利益(粗利)400億円売上原価 600億円
2段目営業利益100億円販売費及び一般管理費 300億円
3段目経常利益105億円営業外損益 +5億円(受取利息など+12億円、支払利息など−7億円)
4段目税引前当期純利益95億円特別損益 −10億円(工場の減損損失など)
5段目当期純利益67億円法人税等 28億円
5つの利益、それぞれの意味
  • ① 売上総利益(粗利): 売上から商品の原価だけを引いた利益。商品そのものの強さを表します。サンプル製作所は400億円なので、粗利率は40%。
  • ② 営業利益: 粗利から人件費・広告費・家賃などを引いた、本業の儲け。5つの中で最も重要視されます。100億円なので営業利益率は10%。
  • ③ 経常利益: 営業利益に、利息の受け払いや為替差損益など本業以外のふだんの損益を加えたもの。読みは「けいじょうりえき」、略して「けいつね」。
  • ④ 税引前当期純利益: 経常利益に、その年だけの特別な損益(土地の売却益、工場の減損損失、災害の損失など)を加えたもの。
  • ⑤ 当期純利益: 税金を払って最後に残る最終利益。配当の原資であり、1株あたり利益(EPS)やPERの計算にも使われます。
1株あたりに直してみるサンプル製作所の発行済株式数が1億株なら、当期純利益67億円 ÷ 1億株 = 1株あたり利益(EPS)は67円。株価が1,000円ならPERは約15倍、という具合につながります。PLのいちばん下の数字は、そのまま株価指標の入口になっています。

営業利益と経常利益の違いは? — 本業か、本業以外か

初心者がいちばんつまずくのがここです。答えはシンプルで、営業利益は「本業だけの儲け」、経常利益は「本業+本業以外のふだんの損益」です。

本業以外のふだんの損益とは、営業外収益・営業外費用と呼ばれるもの。銀行預金の受取利息、借入金の支払利息、外貨建て取引の為替差損益、持分法による投資損益などが入ります。会社の本業ではないけれど、毎年それなりに発生する性質のお金です。

サンプル製作所は営業利益100億円に対して経常利益105億円。受取利息などが12億円、借入金の支払利息などが7億円で、差し引き+5億円が乗った形です。もしこの会社が借金まみれで支払利息が年50億円あれば、営業利益100億円でも経常利益は50億円台まで落ちます。同じ本業の実力でも、財務体質によって経常利益は変わるわけです。

使い分けとしては、同業他社と本業の強さを比べたいときは営業利益、借金の重さまで含めた総合的な実力を見たいときは経常利益。営業利益と経常利益が大きく離れている会社は、必ずその理由を確認してください。

営業利益経常利益
何の儲け?本業だけの儲け本業+ふだんの本業以外の損益
含まれるもの売上高から原価と販管費を引いたもの営業利益に受取利息・支払利息・為替差損益などを加減
英語ではOperating Income(海外企業でも一般的)日本独自の概念で、米国の決算書には出てこない
こう使う同業他社と本業の強さを比べる借金の重さも含めた通常の実力を見る
経常利益は日本独特経常利益は日本の会計基準に特有の区分で、国際会計基準(IFRS)を採用している会社の決算書には出てきません。トヨタのようにIFRSや米国基準で開示している企業のPLに経常利益が見当たらなくても、異常ではないので慌てないでください。その場合は営業利益と税引前利益で読みます。

どの段で利益が消えた? — 利益率で読むのがコツ

PLを読むコツは、金額そのものより「どの段で利益が減ったか」を見ることです。粗利は厚いのに営業利益が薄いなら、広告費や人件費が重い。営業利益は立派なのに経常利益が小さいなら、借金の利息が効いている。営業利益は横ばいなのに純利益が急減したなら、特別損失か税金に何かある。階段のどこで転んだかがわかれば、会社の課題が見えてきます。

そのために使うのが利益率です。売上高に対する割合に直せば、売上高1,000億円の会社と100億円の会社も同じ土俵で比べられます。サンプル製作所なら粗利率40%、営業利益率10%、純利益率6.7%。この3つを口に出して言えるようになれば、PLはもう読めています。

4つの利益率と、ざっくりの目安
利益率計算式目安何がわかる?
売上総利益率(粗利率)売上総利益 ÷ 売上高小売10〜30%、製造業20〜40%、ソフトウェア70%超と業種差が大きい商品やサービスそのものの強さ。ブランド力や技術力が高いほど厚くなる
営業利益率営業利益 ÷ 売上高10%以上でおおむね優秀本業の稼ぐ力。同業他社との比較にいちばん向く
経常利益率経常利益 ÷ 売上高営業利益率と近ければ健全財務体質込みの実力。借金が重いと営業利益率より目立って下がる
当期純利益率当期純利益 ÷ 売上高5%以上が一つの目安株主の取り分。EPS・配当・PERの源になる
利益率は業種をまたいで比べない営業利益率3%のスーパーと20%の医薬品会社を並べて「スーパーはダメ」と判断するのは間違いです。薄利多売で回転させる商売と、開発費をかけて高い値段で売る商売では、そもそも利益率の構造が違います。比べるのは必ず同業他社か、その会社自身の過去5年です。

増収増益・増収減益ってどういう意味?

決算のニュースで必ず出てくるのが「増収増益」という言葉。収は売上高、益は利益を指します。つまり増収増益は、売上高も利益も前年より増えたという意味です。

組み合わせは4通りあり、それぞれ会社に起きていることが違います。とくに注意して読みたいのが増収減益と減収増益で、この2つには会社の変化のサインが隠れていることが多いです。

4つの組み合わせと、その裏側
  • ① 増収増益(売上↑ 利益↑): いちばん素直に良い形。商売が広がり、利益もついてきています。
  • ② 増収減益(売上↑ 利益↓): 売れてはいるが儲かっていない状態。値引きで売った、原材料費や人件費が上がった、広告や新規出店に先行投資した——このどれかです。投資が理由なら数年後に回収されることもあります。
  • ③ 減収増益(売上↓ 利益↑): 売上は落ちたが、不採算事業をやめたりコストを削ったりして利益は増えた形。体質改善の途中かもしれませんし、身を削り続けているだけかもしれません。売上が戻るかどうかが分かれ目です。
  • ④ 減収減益(売上↓ 利益↓): 事業が縮んでいる形。一時的な要因なのか、構造的な不振なのかを決算資料で確かめる必要があります。

損益計算書の落とし穴 — 純利益だけ見ると騙される

PLで初心者が引っかかりやすいポイントを3つ挙げます。どれも「いちばん下の数字だけを見る」ことから起きます。

① 特別利益で純利益が化粧される: 本業が不調でも、保有していたビルや株式を売った特別利益で、その年の純利益だけ立派に見えることがあります。売れる資産は無限ではないので、翌年には元に戻ります。

② 減損損失で純利益だけ沈む: 逆に、過去の買収でつけたのれんの減損や工場の減損は特別損失に計上され、営業利益は好調なのに純利益が赤字、という年もあります。現金が出ていく損失ではないので、本業が元気ならむしろ膿を出したと見ることもできます。

③ 会社予想は「予想」でしかない: PLの数字のうち、今期分は会社が出した業績予想です。期の途中で上方修正・下方修正されることがあり、株価はそのたびに大きく動きます。予想PERを使うときは、この前提を忘れないでください。

「営業利益は減っているのに純利益は増えている」この組み合わせを見たら、必ず途中の階段を確認してください。特別利益で埋めているのか、税負担が一時的に軽かったのか。理由が本業の外にあるなら、その利益は来年には消えます。

まとめ

損益計算書は、売上高から費用を引きながら降りていく引き算の階段。途中に売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益という5つの利益が現れます。

営業利益は本業だけの儲け、経常利益はそこに利息や為替などふだんの本業外の損益を足したもの。この違いを押さえるだけで、決算のニュースの意味がぐっとわかるようになります。

読むときは金額より、どの段で利益が消えたかと、営業利益率が何%かに注目してください。まずは気になる会社の決算短信を開いて、売上高・営業利益・純利益の3つを5年分並べてみましょう。あわせて貸借対照表とキャッシュフロー計算書も見れば、財務三表がそろって会社の姿が立体的に見えてきます。

よくある質問

営業利益と経常利益の違いは何ですか?

営業利益は本業だけで稼いだ利益で、売上高から売上原価と販管費を引いたものです。経常利益はそこに受取利息・支払利息・為替差損益といった本業以外のふだんの損益を加減したもの。つまり借金が多い会社は支払利息のぶん経常利益が営業利益より小さくなります。本業の強さを比べるなら営業利益、財務体質まで含めた実力を見るなら経常利益を使います。

損益計算書で一番大事な利益はどれですか?

投資判断でいちばん重視されるのは営業利益です。本業だけで稼いだ利益なので、その会社の実力を素直に表し、同業他社とも比べやすいためです。ただし配当やEPS、PERの計算に使われるのは当期純利益なので、株主の取り分としては純利益も欠かせません。営業利益で実力を、純利益で取り分を見る、と使い分けてください。

営業利益率は何%あれば優秀ですか?

事業会社ならおおむね10%以上が一つの目安です。5%を下回ると価格競争が厳しい商売、20%を超えていれば強いブランドや技術で高い値付けができている可能性が高いと読めます。ただし業種差が非常に大きく、スーパーやコンビニなどの小売は3%前後が普通です。必ず同業他社か、その会社自身の過去5年と比べてください。

増収減益とはどういう意味ですか?

売上高は前年より増えたのに、利益は減った状態を指します。原因は主に3つで、値引きして数量を売った、原材料費や人件費が上がって原価が膨らんだ、新店舗や広告に先行投資した、のいずれかです。3つ目なら数年後に回収される可能性がありますが、1つ目や2つ目が続いているなら利益率の悪化が構造的なサインかもしれません。

経常利益がない決算書があるのはなぜですか?

経常利益は日本の会計基準に特有の区分だからです。国際会計基準(IFRS)や米国会計基準を採用している企業の損益計算書には経常利益という行がなく、営業利益の下は税引前利益になります。日本の大手企業でもIFRSを採用する会社が増えているため、経常利益が見当たらなくても異常ではありません。その場合は営業利益と税引前利益で読み替えてください。

売上総利益と営業利益はどちらを見るべきですか?

目的が違うので両方見ます。売上総利益(粗利)は売上から原価だけを引いたもので、商品やサービスそのものの強さを表します。営業利益はそこから人件費・広告費・家賃などを引いたもので、会社としての本業の実力を表します。粗利率は高いのに営業利益率が低い会社は、良い商品を持っているのに販売や管理にお金がかかりすぎている、と読めます。

このテーマをもっと深めるなら

おすすめ本の一覧では、 お金の基礎から株式投資・ファイナンス・経営戦略まで26冊をジャンル別に紹介しています。

あわせて読みたい