営業利益とは? — 本業だけで稼いだ利益
営業利益は、売上高から売上原価(商品を作る・仕入れるコスト)と販管費(人件費・広告費・家賃など売るためのコスト)を引いた利益。ひとことで言えば本業の商売でいくら儲けたかです。英語ではOperating Income、読み方は「えいぎょうりえき」。
パン屋さんなら「パンを売った代金 − 小麦粉代 − 店員さんの給料や店の家賃」。株や不動産の売却益、借金の利息といった本業以外の損得は、いっさい混ざっていません。だからこそ、その会社の商売そのものの実力が最もよく表れる利益なのです。
この記事では架空の会社「サンプル製作所」を例に使います。売上高1,000億円、売上原価600億円、販管費300億円。営業利益は1,000 − 600 − 300 = 100億円です。売上高・経常利益・純利益の記事でも同じ会社の同じ数字を使っているので、あわせて読むと損益計算書1枚が頭の中でつながります。
粗利(売上総利益)との違い — 販管費には何が入る?
営業利益の1つ上の段にあるのが売上総利益、いわゆる粗利です。粗利は「商品そのものの利幅」で、サンプル製作所なら400億円(粗利率40%)。ここから会社を運営するための費用=販管費を引くと営業利益になります。
粗利は高いのに営業利益が薄い会社は、商品は魅力的なのに販売や管理にお金がかかりすぎている状態です。逆に粗利が薄くても販管費を極限まで抑えて営業利益を確保する会社もあります。ディスカウントストアやネット専業の会社によく見られるスタイルです。
販管費の中身は決算資料の注記で確認できます。とくに研究開発費と広告宣伝費は、削れば今年の営業利益は増えますが、数年後の売上を細らせます。「営業利益が増えた理由が販管費の削減だけ」という決算には、少し慎重になったほうがいいでしょう。
- ① 人件費: 本社や営業部門の給料・賞与・退職給付費用。多くの会社で販管費の最大項目です。
- ② 広告宣伝費・販売促進費: テレビCM、ネット広告、ポイント還元の原資など。
- ③ 研究開発費: 新製品や新技術の開発にかかる費用。製造業や医薬品では巨額になります。
- ④ 地代家賃・水道光熱費: 本社や店舗の賃料など。
- ⑤ 減価償却費・のれん償却費: 設備や買収したのれんの価値を年数で割って費用化したぶん。
- ⑥ 運賃・保管費、支払手数料、旅費交通費など: 売るために必要な諸経費。
なぜプロは営業利益をいちばん見るのか
純利益は最終成績として大事ですが、特別損益(ビル売却益や災害損失など、その年限りの損得)や税金の影響で大きくブレます。本業は絶好調なのに、一時的な損失で純利益だけ凹む年もあれば、その逆もあります。
営業利益はそうしたノイズが入らないため、「来年も再来年も続く実力」を測るのに最適です。決算のニュースで「営業増益」「営業減益」がまず報じられるのも、株価が営業利益の予想変化に敏感に反応するのも、これが理由です。
会社が期の途中で業績予想を修正するときも、市場がまず見るのは営業利益の修正幅です。純利益だけ上方修正されても「資産を売っただけでは?」と疑われますが、営業利益の上方修正は本業が想定より順調に回っている証拠として素直に評価されます。
営業利益率は何%が目安? — 業種別の早見表
営業利益の金額そのものは会社の大きさで決まってしまうので、比較には営業利益率(営業利益 ÷ 売上高)を使います。サンプル製作所なら100億円 ÷ 1,000億円 = 10%。日本の上場企業の平均はおよそ7〜8%なので、平均を上回り、優秀とされる10%のラインにちょうど乗った水準です。
ざっくりした基準としては「5%で標準、10%超なら優秀、20%超は何か強力な武器を持つ会社」。ただし、ここからが大事なところで、業種によって普通の水準はまったく違います。スーパーの営業利益率3%は健闘、ソフトウェア会社の営業利益率3%は非常事態、という具合です。
営業利益率が1ポイント違うと何が変わるか、金額で見ておきましょう。売上高1,000億円の会社なら1ポイント=10億円。営業利益率10%の会社が9%に落ちるだけで、営業利益は100億円から90億円へ、10%の減益になります。利益率は小数点1桁の変化でも侮れません。
| 業種の例 | 営業利益率の目安 | なぜその水準になる? |
|---|---|---|
| スーパー・ドラッグストア・卸売 | 1〜4% | 薄利多売が前提。1円単位の価格競争にさらされる |
| 総合商社・石油・電力 | 2〜6% | 取扱金額が巨大なぶん、率で見ると小さく出やすい |
| 建設・人材サービス・物流 | 4〜8% | 人手と外注費の比率が高く、利幅を大きく取りにくい |
| 自動車・電機・機械 | 5〜12% | 世界景気に業績が振られる。好況期は10%超も |
| 食品・日用品(ブランド品) | 8〜15% | ブランド力で値下げ競争を避けられるぶん厚めになる |
| 鉄道・通信・インフラ | 10〜20% | 設備という参入障壁と、景気に左右されない安定需要 |
| 医薬品 | 15〜25% | 特許で守られた期間は圧倒的な利幅を確保できる |
| ソフトウェア・ゲーム・ネットサービス | 20〜40% | 1本追加で売るコストがほぼゼロ。売れるほど率が上がる |
営業利益率の高さは「強さ」の証明 — 堀のある会社
営業利益率が高い会社は、値下げ競争に巻き込まれずに商売ができています。それは「その会社でないとダメな理由」——ブランド、特許、圧倒的シェア、乗り換えの面倒さ——を顧客側が感じている証拠です。バフェットの言う「堀(モート)のある会社」は、数字の上では高い営業利益率として現れます。
逆に営業利益率2〜3%の会社は、わずかなコスト上昇や値下げ圧力で赤字に転落しかねません。売上高1,000億円・営業利益率2%の会社は営業利益20億円。原材料が3%上がって売上原価が20億円増えれば、それだけで営業赤字です。同じ「営業黒字」でも、利益率の厚みは会社の耐久力そのものです。
見るべきは水準だけでなく方向でもあります。営業利益率が5年かけてじわじわ上がっている会社は、値上げが通っている、あるいは高付加価値の商品構成にシフトできている会社。逆にじわじわ下がっているなら、競争が激しくなっているサインかもしれません。ROE(自己資本利益率)が高い会社の多くは、その源泉をたどると高い営業利益率に行き着きます。
営業増益の中身を分解する — 決算説明資料の増減要因分析
営業利益が増えた・減ったというニュースを見たら、次に確かめたいのは「何で増えたのか」です。上場企業の決算説明資料には、前期の営業利益から当期の営業利益までを要因ごとに積み上げた滝のようなグラフがほぼ必ず載っています。増減要因分析、ウォーターフォールチャート、ブリッジチャートなどと呼ばれるページです。
見方は単純で、左端が前期の営業利益、右端が当期の営業利益、あいだの棒が増減の理由です。プラス方向に伸びるのが増益要因、下に落ちるのが減益要因。ここを読むだけで、増益が本業の伸びによるものか、コスト削減によるものか、為替のような外部要因によるものかが分かれます。
たとえば営業利益が500億円から600億円へ100億円の増益だったとします。内訳が「増収効果+120億円、原価率の悪化-60億円、販管費の増加-30億円、為替+70億円」だった場合、増益100億円のうち70億円は円安が運んできたぶんです。円高に振れれば剥落する利益なので、実力ベースの増益は30億円と読むのが正確です。同じ「営業増益20%」でも、中身が増収効果なのか為替なのかで、来期の見え方はまったく違います。
資料が手元になくても、決算短信の売上高・売上原価・販管費を前期と並べるだけで、原価率と販管費率の変化はつかめます。売上が伸びたのに営業利益が伸びないときは、たいていこのどちらかが悪化しています。
| 要因 | 中身 | 持続性 |
|---|---|---|
| 増収効果 | 売れた数量・単価が増えたぶん | 高い。本業が伸びている証拠で、来期も期待できる |
| 売上原価率 | 原材料費・仕入価格・製造コストの変化 | 中。市況次第で戻ることも悪化することもある |
| 販管費 | 人件費・広告費・研究開発費の増減 | 要注意。削って作った増益は数年後に売上減で返ってくる |
| 為替 | 海外売上の円換算による増減 | 低い。実力ではなく、円高に振れれば消える |
| 一過性要因 | 補助金、和解金、特需の反動など | なし。翌期には無くなる前提で読む |
営業利益を見るときの落とし穴4つ
営業利益は信頼できる指標ですが、万能ではありません。初心者がつまずきやすいポイントを4つ挙げます。
① 販管費を削って作った営業利益: 広告費や研究開発費のカットは、今年の営業利益をきれいに見せます。しかし効果が出るのは翌年以降で、数年後の売上減として跳ね返ってきます。増益の理由が「コスト削減」だけの決算は、中身を確かめましょう。
② 会計基準で数字が変わる: 日本基準ではのれん(買収プレミアム)を毎年少しずつ償却して販管費に計上しますが、国際会計基準(IFRS)では原則として償却しません。買収を繰り返してきた会社は、IFRSに移行するだけで営業利益が跳ね上がることがあります。同業比較のときは基準の違いに注意してください。
③ 為替の影響は営業利益にも入る: 海外売上の円換算は営業利益より上の段階で行われるため、円安は営業利益を押し上げます。「営業増益」の中身が実力なのか円安なのかは、決算説明資料の増減要因分析(ブリッジチャート)で確認できます。
④ 業種によって名前が違う: 銀行の決算では営業利益ではなく「業務純益」、保険では「基礎利益」が本業の稼ぐ力を表します。金融業の決算をふつうの製造業と同じ目線で読もうとすると混乱するので、そこは別物と割り切りましょう。
まとめ
営業利益は特別損益のノイズが入らない「本業の稼ぐ力」で、プロが最重視する利益です。金額よりも営業利益率で比べるのがコツで、全産業平均は7〜8%、10%超なら優秀、20%超は強力な武器を持つ会社と考えていいでしょう。
ただし小売の3%とソフトウェアの3%はまったく意味が違います。利益率は必ず同業他社と、そしてその会社自身の5年前と比べてください。
高い営業利益率は、値上げできる力・乗り換えられにくさ・参入障壁という「堀」の証明です。気になる銘柄の営業利益率を、同業3社と並べて計算してみるところから始めてみてください。
よくある質問
営業利益率は何%あれば優秀ですか?
日本の上場企業の平均がおよそ7〜8%なので、10%を超えていれば優秀、20%超なら強力な競争力を持つ会社と考えられます。ただし業種差が大きく、スーパーや卸売は1〜4%が普通、ソフトウェアや医薬品は20%超がざらです。必ず同業他社と、その会社自身の過去5年と比べて判断してください。
営業利益とは何ですか?
売上高から売上原価と販売費及び一般管理費(販管費)を引いた、本業だけで稼いだ利益です。株式や不動産の売却益、借入金の利息といった本業以外の損得はいっさい含まれません。そのため会社の商売そのものの実力を最もよく表す利益とされ、アナリストや機関投資家が決算でまず確認する数字になっています。
営業利益と売上総利益(粗利)の違いは何ですか?
売上総利益は売上高から売上原価だけを引いた「商品そのものの利幅」で、営業利益はそこからさらに販管費を引いたものです。たとえば売上高1,000億円・売上原価600億円なら売上総利益は400億円、販管費300億円を引いて営業利益100億円になります。粗利が厚くても販管費が重ければ営業利益は薄くなります。
販売費及び一般管理費には何が含まれますか?
本社や営業部門の人件費、広告宣伝費、研究開発費、地代家賃、減価償却費、支払手数料、運賃などが含まれます。多くの会社では人件費が最大の項目です。研究開発費や広告費は削れば当期の営業利益が増えますが数年後の売上を細らせるため、増益の理由がコスト削減だけの決算は中身の確認をおすすめします。
営業増益なのに株価が上がらないのはなぜですか?
増益の中身が評価されていない可能性があります。決算説明資料の増減要因分析を見て、増益が「増収効果」によるものか、「販管費の削減」や「為替」によるものかを確認してください。円安で嵩上げされた増益は円高に振れれば消えますし、広告費や研究開発費を削って作った増益は数年後に売上減として返ってきます。市場がこうした増益を素直に評価しないのは、来期以降も続く利益とは見なさないためです。市場の期待をすでに織り込んでいた場合も、増益発表で株価が動かないことがあります。
営業利益が赤字(営業赤字)の会社は危ないですか?
本業で売るほど損をしている状態なので、警戒が必要です。資産売却益を計上すれば最終利益は黒字にできますが、それは体の一部を売って生活費にあてるのと同じで長続きしません。ただし創業間もない成長企業が意図的に先行投資して営業赤字になっているケースもあるため、赤字の理由と黒字化の道筋が示されているかを確認してください。
営業利益はどこで確認できますか?
証券会社アプリの銘柄ページにある「業績」タブで、売上高と並んで数年分が表示されます。より詳しく見るなら決算短信の1ページ目のサマリーで、営業利益の金額と前年同期比の増減率が確認できます。営業利益率を出したいときは、同じページの売上高で割ってください。会社四季報にも数年分がまとまっています。
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