経常利益とは? — 本業+財務活動の「ふだんの総合力」
経常利益は、営業利益(本業の儲け)に、営業外収益・営業外費用という「本業以外だけど毎年ふつうに発生する損得」を足し引きした利益です。読み方は「けいじょうりえき」ですが、ベテラン投資家は親しみを込めて「けいつね」と呼びます。
営業外の中身は、受取利息や配当金、持っている外貨の為替差損益、そして借金の支払利息など。つまり経常利益は「商売の腕前+財テクの上手さ+借金の重さ」まで含めた、会社のふだんの総合力を表します。
個人にたとえると、営業利益が「給料から必要経費を引いた手取りの本体」だとすれば、経常利益は「そこに預金の利息や投資信託の分配金を足し、住宅ローンの利息を引いた、その年の家計の実力」。副収入もローン負担も込みで、毎年くり返し発生するものだけを集めた数字だと考えるとしっくりきます。
そもそも利益は1つではなく、売上高から費用を段階的に引いていく階段のかたちで並んでいます。経常利益はその上から4段目。売上高から当期純利益までを一度通しで見ておくと、どの利益がどこまでの費用を含んでいるのかが一目でわかります。
| 段階 | 金額 | 計算と意味 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,000億円 | 1年間に売った金額の合計 |
| 売上総利益(粗利) | 400億円 | 売上高1,000億円 − 売上原価600億円 |
| 営業利益 | 100億円 | 粗利400億円 − 販管費300億円。本業の儲け |
| 経常利益 | 105億円 | 営業利益100億円 + 営業外収益12億円 − 営業外費用7億円 |
| 税引前当期純利益 | 95億円 | 経常利益105億円 − 特別損失10億円 |
| 当期純利益 | 67億円 | 税引前95億円 − 法人税等28億円。株主の取り分 |
営業外収益・営業外費用には何が入る?
経常利益を理解するいちばんの近道は、営業外に何が並ぶのかを知ることです。共通するのは「本業ではないが、毎年ふつうに起きる」という性格。逆に、その年限りの土地売却益や災害損失は営業外ではなく、もう一段下の特別損益に入ります。
実際の決算短信では、営業外収益・営業外費用の内訳が損益計算書の中で項目ごとに並んでいます。金額の大きい項目を上から2つ3つ見れば、その会社が「資産を運用している会社」なのか「借金を返している会社」なのかが数十秒でわかります。
| 区分 | 代表的な項目 | 何を意味するか |
|---|---|---|
| 営業外収益 | 受取利息・受取配当金 | 手元資金や持ち合い株式から生まれる収入。現金リッチな会社ほど大きい |
| 営業外収益 | 持分法による投資利益 | 20〜50%出資している関連会社の利益のうち、自社の取り分 |
| 営業外収益 | 為替差益 | 外貨建ての預金や売掛金が、円安で円換算するとふくらんだぶん |
| 営業外収益 | 不動産賃貸収入 | 本業に使っていない土地・ビルを貸して得る家賃 |
| 営業外費用 | 支払利息・社債利息 | 借入金や社債の利息。有利子負債の重さがそのまま出る |
| 営業外費用 | 為替差損 | 外貨建て資産が円高で目減りしたぶん。輸出企業の悩みの種 |
| 営業外費用 | 持分法による投資損失 | 関連会社が赤字だったときの、自社の負担ぶん |
経常利益と営業利益の違い — 「差」が語ること
経常利益の面白さは、営業利益と見比べたときに現れます。2つの数字の差が、そのまま「本業以外の体質」を映すからです。
経常利益 < 営業利益の会社: 差の主な正体は支払利息、つまり借金の重さです。本業で稼いだ利益が利息の支払いで削られている状態で、差が大きいほど財務に負担があります。
経常利益 > 営業利益の会社: 受取利息・配当や持分法投資利益(出資先の儲けの取り分)が上乗せされています。潤沢な資産や優良な投資先を持つ余裕の表れです。
同じ営業利益100億円の会社でも、経常利益が110億円の会社と85億円の会社では、財務体質がまるで違うのです。サンプル製作所は営業利益100億円に対して経常利益105億円。差はプラス5億円と控えめですが、符号がプラスである以上、財務は健全なほうだと読めます。
金利が上がる局面では、この差はじわじわ広がります。有利子負債が1,000億円ある会社の平均金利が1%上がれば、支払利息は年10億円増える計算。本業の営業利益が同じままなら、経常利益はそのぶんまるごと削られます。借入の大きい不動産・電力・通信インフラのような業種で、金利のニュースが出るたびに株価が反応するのはこのためです。
| 差のパターン | 主な原因 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 経常利益が大きく上回る | 受取利息・配当金、持分法投資利益、為替差益 | 手元資金や出資先が厚い資産リッチ企業。ただし為替差益は年によって消える |
| ほぼ同じ | 営業外の項目が小さい | 無借金に近く、財務活動の影響を受けにくい身軽な会社 |
| 経常利益が下回る | 支払利息、社債利息、為替差損 | 有利子負債が重い。金利が上がると差はさらに広がる |
為替差損益で経常利益はどう動く? — 円安・円高の影響
初心者がいちばん驚くのが、為替の影響が営業利益と経常利益の両方に、しかも別のかたちで現れることです。海外で売った商品の円換算は営業利益より上の段階で行われますが、外貨建ての預金や売掛金を決算日のレートで評価し直したときの差額は、営業外の為替差損益として経常利益に効いてきます。
たとえば外貨建ての資産を100億円ぶん持っている会社で、期末までに1ドル150円から160円へ円安が進んだとします。円換算の価値はおよそ6.7%ふくらむので、6〜7億円の為替差益が営業外収益に計上されます。逆に円高に振れれば、同じ規模の為替差損です。
だから「営業利益は微減なのに経常利益は大幅増」という決算を見たら、まず為替を疑ってください。会社の商売がうまくなったわけではなく、たまたま決算日のレートが有利だっただけ、というケースはよくあります。しかもこの差益は翌年の円高であっさり吹き飛びます。
実は日本独特の指標 — IFRSに経常利益はない
経常利益は日本の会計基準に特有の利益で、米国基準や国際会計基準(IFRS)を採用する会社のPLには登場しません。トヨタや日立などIFRS採用企業の決算では、代わりに「税引前利益」などが使われます。
とはいえ日本では長年、「経常利益こそ会社の実力」として最も重視されてきた歴史があり、新聞の決算記事や会社四季報でも主役級の扱いです。日本株に投資するなら、読み方を知っておいて損はありません。
IFRS採用企業と日本基準の会社を比べたいときは、経常利益ではなく営業利益か税引前利益をそろえて比較してください。「あの会社は経常利益が載っていないから決算が不透明だ」ということはまったくなく、単に採用している物差しが違うだけです。
経常利益を見るときのチェックポイント
実際の決算で経常利益を見るときは、次の順番で確認するとブレません。経常利益率(経常利益 ÷ 売上高)の目安は、全産業でおおむね5〜6%前後。サンプル製作所は105億円 ÷ 1,000億円で10.5%と、平均の倍近い良好な水準です。
- ① 営業利益と並べる: まず金額を並べて、差がプラスかマイナスかを見る。ここで会社の財務体質の方向性が決まります。
- ② 差の中身を見る: 決算短信の営業外収益・営業外費用の内訳から、金額の大きい項目を2つ3つ拾う。支払利息か、為替差損益か、受取配当金か。
- ③ 為替差益を差し引いて考える: 為替差益が大きい年の経常利益は、翌年そのぶん減る可能性があります。「為替を除くとどうか」を頭の中で計算しておきましょう。
- ④ 過去5年と比べる: 営業利益と経常利益の差が年々広がっているなら、借入が増えているか金利負担が重くなっているサイン。自己資本比率もあわせて確認を。
四半期決算では進捗率で見る — 上期50%が目安
決算は3か月ごとに出ます。年4回の数字を毎回ゼロから読むのは骨が折れるので、実戦では「通期の会社予想に対して、いまどこまで来ているか」を見ます。これが進捗率です。
目安は、第1四半期で25%、上期(第2四半期まで)で50%、第3四半期までで75%。上期終了時点で55%まで来ていれば計画より速く、40%しかなければ遅れぎみ、という読み方をします。たとえばサンプル製作所が翌期の経常利益予想を115億円と発表し、上期終了時点で63億円まで積み上げていれば、進捗率は約55%。順調なペースです。
ただし季節性のある会社では、この目安がそのまま当てはまりません。年末商戦が稼ぎ時の小売、新作の発売時期に売上が集中するゲーム会社、年度末に工事が完成する建設業などは、下期に利益が偏ります。上期の進捗が40%でも「その会社にとっては普通」ということがあるので、前年・前々年の同じ四半期の進捗率と必ず見比べてください。
まとめ
経常利益は営業利益に利息や為替など「ふだんの営業外損益」を加えた総合力の利益。営業利益との差から、借金の重さや資産の厚みが読み取れる、日本独特だが情報量の多い指標です。
経常利益が営業利益を下回るなら支払利息、上回るなら受取利息・配当や為替差益。差の中身は決算短信の営業外の内訳を見ればすぐわかります。とくに為替差益は翌年に消えることがあるので、そのぶんを差し引いて実力を見てください。
国際会計基準を採用する会社には経常利益がないため、同業比較の軸は営業利益に置きましょう。まずは気になる銘柄の営業利益と経常利益を並べて、差がプラスかマイナスかを確かめてみてください。「けいつね」と呼べたら、あなたも決算読みの仲間入りです。
よくある質問
経常利益と営業利益の違いは何ですか?
営業利益は本業だけで稼いだ利益、経常利益はそこに本業以外で毎年発生する損得を足し引きした利益です。加えるのは受取利息・受取配当金・持分法投資利益・為替差益など、引くのは支払利息・社債利息・為替差損など。営業利益が商売の腕前を示すのに対し、経常利益は財務活動まで含めた会社のふだんの総合力を示します。
経常利益は「けいつね」と読むのですか?
正式な読み方は「けいじょうりえき」です。「けいつね」は市場関係者やベテラン投資家が使う業界の通称で、「経常」の「常」を訓読みにしたものです。電話や立ち会いの場で「けいじょう」と言うと「計上」と紛らわしいため区別のために生まれた呼び方といわれています。決算資料や公式な文書では使われません。
営業外収益にはどんなものが含まれますか?
受取利息、受取配当金、持分法による投資利益、為替差益、不動産賃貸収入などが代表例です。共通するのは「本業ではないが毎年ふつうに発生する収入」という点。一方で土地やビルを売った売却益のようにその年限りのものは営業外ではなく特別利益に分類され、経常利益より下の段階で加算されます。
経常利益が載っていない会社があるのはなぜですか?
その会社が国際会計基準(IFRS)または米国基準を採用しているためです。経常利益は日本の会計基準に特有の区分で、IFRSの損益計算書には存在しません。代わりに営業利益と税引前利益が記載されます。決算が不透明なわけではなく物差しが違うだけなので、比較したいときは営業利益か税引前利益をそろえて見てください。
経常利益率は何%あれば優秀ですか?
全産業の平均はおおむね5〜6%前後なので、10%を超えていれば優秀な部類です。ただし営業利益率と同じく業種差が大きく、小売や卸売では数%が普通、ソフトウェアや医薬品では20%を超えることもあります。単独で判断せず、営業利益率と並べて「本業と財務のどちらが効いているのか」を見るのが実践的です。
経常利益と純利益の違いは何ですか?
経常利益は毎年くり返し発生する損得までを反映した利益で、純利益はそこからさらに特別損益と法人税等を引いた最終利益です。たとえば経常利益105億円の会社が工場の減損損失10億円を特別損失に計上すると税引前当期純利益は95億円、法人税等28億円を引いて純利益は67億円になります。株主の取り分にあたるのは純利益のほうです。
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