RSIの見方 — 買われすぎ・売られすぎの体温計

RSI(Relative Strength Index・相対力指数)は、直近の値動きの中で「上げの勢いがどれくらい優勢か」を0〜100の数字にした指標です。読み方は「アール・エス・アイ」。0に近いほど下げの勢いが強く、100に近いほど上げの勢いが強いことを表します。

計算はシンプルで、直近14日間のうち値上がりした日の上げ幅の平均を、上げ幅の平均と下げ幅の平均の合計で割るだけ。14日すべてが値上がりならRSIは100、すべて値下がりなら0になります。半々ならちょうど50です。つまりRSIは「最近の勝率と勝ちっぷり」を1つの数字にまとめたもの、と考えるとイメージしやすいはずです。

目安は教科書的に、70以上で買われすぎ、30以下で売られすぎ。証券アプリのRSIチャートには、この70と30のところに横線が引かれているのが普通です。より慎重に見る人は80/20を使います。50は強弱の分かれ目で、50を上抜けたら買い方優勢に転じた、と読むこともあります。

使いどころは、行きすぎの察知です。RSIが80を超えるような過熱状態で飛び乗るのは危険、逆に25まで売り込まれた優良株は反発が近いかもしれない——逆張りのタイミングを探る道具として使われます。パラメータの標準値は日足で14日ですが、日本では9日を使う人も多く、期間を短くするほど数値が激しく上下します。

RSIを計算してみる直近14日のうち、値上がりが9日で上げ幅の合計が180円(1日平均20円)、値下がりが5日で下げ幅の合計が50円(1日平均10円)だったとします。RSI = 20 ÷(20 + 10)× 100 = 約66.7。まだ70には届いていないので「やや買われすぎ寄りだが過熱まではいかない」水準、と読めます。

MACDの使い方 — トレンドの向きと勢いを1本で

MACD(Moving Average Convergence Divergence・移動平均収束拡散法)は、期間の違う2本の移動平均線の差を使って、トレンドの向きと勢いを読む指標です。読み方は「マックディー」。名前は難しそうですが、やっていることは「短期の平均が長期の平均からどれだけ離れたか」を測っているだけです。

画面には3つの部品が表示されます。① MACD線: 短期(標準は12日)の指数平滑移動平均から長期(26日)を引いた値。② シグナル線: そのMACD線をさらに9日で平均した、ゆっくり動く線。③ ヒストグラム: MACD線とシグナル線の差を棒グラフにしたもの。

見方の基本は3つです。まずクロス。MACD線がシグナル線を下から上に抜けたら買いサイン、上から下に抜けたら売りサインとされます。次にゼロラインとの位置。MACDがゼロより上なら短期平均が長期平均を上回っている=上昇基調、下なら下降基調です。最後にヒストグラムの伸び縮み。棒が伸びていれば勢いが強まっている、縮み始めたら勢いが衰えている合図になります。

ただの移動平均線のクロス(ゴールデンクロス)より反応が早いのが持ち味です。指数平滑移動平均は直近の株価に大きな重みをつけて計算するため、単純平均より変化に敏感なのです。その分ダマシも増えるので、日足と週足の両方で確認するなどの工夫が定番です。

MACDは3つの部品で読むクロス(サインのタイミング)、ゼロラインとの位置(いま上昇基調か下降基調か)、ヒストグラムの伸び縮み(勢いが強まっているか衰えているか)。この3つをセットで見ると、同じクロスでも信頼度の違いが判断できます。ゼロラインより下でのゴールデンクロスは、下げ止まりかけただけの弱いサインです。

ボリンジャーバンド — 統計で描く「値動きの通り道」

ボリンジャーバンドは、移動平均線の上下に、統計的な値動きの範囲を帯として描いたものです。1980年代にジョン・ボリンジャーが考案しました。中心にあるのは標準では20日の移動平均線で、その上下に標準偏差(σ・シグマ)という統計のばらつきを表す値を足し引きした線を引きます。

値動きが正規分布に従うと仮定すると、株価が帯の中に収まる確率は、±1σで約68.3%、±2σで約95.4%、±3σで約99.7%になります。よく使われるのは±2σで、証券アプリの初期設定もたいてい20日・±2σです。

使い方は2流派あります。① 逆張り: 帯の外に飛び出したら「行きすぎ」とみて反対方向に張る。② 順張り: 帯が急に広がり(エクスパンション)、株価が上のバンドに沿って走り出したら(バンドウォーク)、強いトレンドの発生とみて流れに乗る。同じ道具でも正反対の使い方があるのが面白いところです。考案者のボリンジャー本人は、もともと順張りの道具として設計したと語っています。

2σのイメージ帯の中に約95%収まるということは、帯の外に出るのは20回に1回の「珍事」。その珍事が起きたとき、「戻るはず」と見るか「新しい動きの始まり」と見るかで、逆張り派と順張り派に分かれます。ただし株価の分布は正規分布より極端な動きが多い(裾が厚い)ことが知られているので、実際には20回に1回よりも高い頻度で帯の外に出ます。

3指標の比較 — どれを、どの相場で使う?

3つの指標は、測っているものも、効く相場も違います。ここを混同したまま使うのが、初心者がいちばん損をするパターンです。まず表で役割を整理しておきましょう。

指標は大きく、トレンドの向きを追う「トレンド系」と、行きすぎ具合を測る「オシレーター系」に分かれます。MACDはトレンド系、RSIはオシレーター系、ボリンジャーバンドはどちらにも使えるハイブリッド。組み合わせるなら、同じ系統どうしではなく、違う系統から1つずつ選ぶのがセオリーです。RSIとストキャスティクスを両方出しても、似た動きをするだけで判断材料は増えません。

RSI・MACD・ボリンジャーバンドの比較(かっこ内は標準パラメータ)
指標何を測る標準の設定と目安
RSI(14)買われすぎ・売られすぎの過熱感期間14日。70以上で買われすぎ、30以下で売られすぎ。50が強弱の分かれ目
MACD(12・26・9)トレンドの向きと勢い短期12日・長期26日・シグナル9日。MACD線とシグナル線のクロスで判断
ボリンジャーバンド(20・±2σ)値動きのばらつきと通り道20日移動平均の上下に±2σ。帯の中に約95%収まる計算
相場の型と、相性のいい指標
  • ① 横ばい・レンジ相場: RSIの70/30、ボリンジャーバンドの逆張りが効きやすい。値幅の上限と下限が決まっているため。
  • ② 強いトレンド相場: MACD、ボリンジャーバンドのバンドウォークが効きやすい。RSIの逆張りはまったく機能しない。
  • ③ どちらか判断できないとき: 何もしないのが正解。指標を増やしても答えは出ず、判断が矛盾して迷いが増えるだけです。

最大の落とし穴 — 逆張り指標はトレンド相場で機能しない

ここが今回いちばん伝えたいところです。RSIやボリンジャーバンドの逆張り的な使い方は、強いトレンドが出ている相場ではまったく効きません。それどころか、いちばん損をしやすい使い方になります。

具体的に想像してみてください。ある銘柄に好材料が出て、株価が上昇を始めます。RSIは70を超えました。「買われすぎだから、そろそろ下がるはず」と考えて空売りしたり、持ち株を売ったりする。ところが株価はさらに上がり、RSIは80、85と上がったまま張りついて動きません。強い上昇トレンドでは、RSIが70超のまま何週間も上がり続けることがざらにあります。「買われすぎ=すぐ下がる」ではないのです。

ボリンジャーバンドも同じです。株価が+2σの外に出たから「行きすぎ」と判断して売ったのに、そこから株価が+2σの線に沿ってずるずる上がり続ける——これがバンドウォークです。帯の外に出たことは「珍しいことが起きた」というサインであって、「元に戻る」というサインではありません。むしろ、珍しいことが起きたということは、何か新しい力が働き始めた可能性のほうが高いとも言えます。

なぜこうなるのか。RSIもボリンジャーバンドも、「株価は平均あたりをうろうろするもの」という前提で作られているからです。この前提は横ばい相場では正しいのですが、決算の大幅な上方修正などで株価が新しい水準に移動していくときには、古い平均を基準にした指標はずっと「行きすぎ」と言い続けることになります。

対処法はシンプルです。指標を見る前に、まずトレンドを判定すること。移動平均線が明確に右上がりで、株価がその上にあるなら、RSIの70超は売りのサインではなく「強い」というだけの情報です。順番を守るだけで、この落とし穴のほとんどは避けられます。

「買われすぎ」で売った株がいちばん上がる初心者が経験しやすい失敗の型がこれです。RSI70で利益確定した銘柄が、その後2倍になる。逆張り指標は「短期の反発を狙う人の道具」であって、長期投資家が持ち株を手放す理由にはなりません。長期で保有すると決めた株を、指標の数字で売らないでください。売る基準は、投資したときの前提が崩れたかどうかです。

一歩進んだ使い方 — ダイバージェンスと組み合わせ

指標に慣れてきたら、ダイバージェンス(逆行現象)という見方を知っておくと役に立ちます。株価と指標が反対の動きをすることを指し、トレンドの息切れを示すサインとされています。たとえば株価は前回の高値を超えて2,200円から2,300円へと上がったのに、RSIは前回の78から72へと下がっている。「値段は上がったのに、上げの勢いは前より弱い」という状態です。これは上昇トレンドの体力が落ちてきたサインと読まれます。MACDでも同じことが起き、株価は高値更新なのにMACDの山が低くなっていく形が典型です。ただしこれも外れます。強いトレンドでは、ダイバージェンスが出てからさらに数ヶ月上がり続けることもあるので、「そろそろ終盤かもしれない」という程度の温度感で受け取ってください。

指標を組み合わせるときの3つのルール
  • ① 系統をずらす: トレンド系(MACD、移動平均線)から1つ、オシレーター系(RSI)から1つ。似た指標を並べても情報は増えません。
  • ② 数を絞る: 表示するのは2つまで。3つ4つ出すと必ずサインが矛盾し、結局「見たいサイン」だけを採用することになります。
  • ③ 時間軸をずらす: 日足でサインが出たら週足でも同じ方向を向いているか確認する。長い時間軸と一致したサインは信頼度が上がります。

指標との正しい付き合い方

3つの指標はどれも過去の株価から計算されたもので、材料は「終値の履歴」だけです。プロでも「複数の指標が同じ方向を向いたときだけ参考にする」「ファンダメンタルズと合わせて最終判断する」という使い方が基本になります。

初心者がやりがちな失敗は、指標のサインだけを根拠に売買を繰り返すこと。手数料を払い、利益が出れば約20.315%の税金も引かれます。10万円の利益なら約2万円が税金です。小さな勝ち負けを重ねているうちに、単に持ち続けていた場合より資産が増えていない——ということになりがちです。

そして、指標の設定をいじり始めたら要注意のサインです。「RSIを14日から9日に変えたら過去のチャートによく当たった」というのは、たいてい過去に合わせただけ(カーブフィッティング)で、これからも当たる保証はありません。標準設定こそ多くの人が見ている数字であり、テクニカルが機能する理由そのものです。

初心者におすすめの距離感は、長期投資の軸を持ったうえで、補助輪として楽しむこと。割安と判断した銘柄を買うとき、RSIが75まで過熱していたら1〜2週間待ってみる。それくらいの使い方で十分に役に立ちます。

3つの役割分担RSI=過熱感の体温計、MACD=トレンド転換の早期警報、ボリンジャーバンド=値動きの通り道。どれか1つから始めるなら、まずRSIが直感的でわかりやすいです。0〜100の数字を見るだけなので、証券アプリを開いて今日の数値を眺めることから始めてみてください。

まとめ

RSIは0〜100で過熱感を測る指標で、標準は14日、70以上が買われすぎ、30以下が売られすぎ。MACDは12日・26日・9日の設定で、2本の線のクロスとヒストグラムからトレンド転換を読む指標。ボリンジャーバンドは20日移動平均の上下に±2σの帯を描き、値動きの通り道を示す指標です。

いちばん大事な注意点は、RSIやボリンジャーバンドの逆張り的な使い方が、強いトレンド相場ではまったく機能しないこと。RSIは70超のまま何週間も張りつきますし、株価は+2σの線に沿ってバンドウォークします。指標を見る前に、いまがトレンド相場か横ばい相場かを判定する——この順番を守ってください。

3つとも過去の値動きの加工品で、これだけで勝ち続けられるわけではありません。系統の違う指標を2つまでに絞り、日足と週足で確認したうえで、最終判断は会社の中身と組み合わせる。初心者はまず長期の視点を持ち、指標は「買う時期を少しずらすための材料」くらいに位置づけておくと、資産形成の邪魔になりません。

よくある質問

RSIは何%以上で買われすぎと判断しますか?

教科書的な目安は70以上が買われすぎ、30以下が売られすぎです。より慎重に見る場合は80/20を使います。50は強弱の分かれ目で、50を上回れば買い方優勢と読みます。ただし強い上昇トレンドではRSIが70を超えたまま何週間も上がり続けることがあるため、70に達したことだけを理由に売り判断をするのは危険です。

RSIとMACDはどちらを使えばいいですか?

測っているものが違うので、相場によって使い分けます。RSIは行きすぎの度合いを測るオシレーター系で、方向感のない横ばい相場に向きます。MACDはトレンドの向きと勢いを測るトレンド系で、明確な上昇・下降が出ている相場に向きます。組み合わせるなら、系統の違うこの2つを1つずつというのが定番の形です。

MACDの標準的な設定値はいくつですか?

短期12日・長期26日・シグナル9日が世界的な標準です。MACD線は12日の指数平滑移動平均から26日の指数平滑移動平均を引いた値、シグナル線はそのMACD線をさらに9日で平均したものになります。証券アプリの初期設定もほぼこの値です。多くの参加者が同じ設定を見ていること自体がサインの機能につながるため、標準のまま使うのが無難です。

ボリンジャーバンドの±2σは何を意味していますか?

株価の値動きが正規分布に従うと仮定したとき、株価が帯の中に収まる確率が約95.4%になる範囲を表します。中心線は標準で20日移動平均線です。ただし実際の株価は正規分布より極端な動きが多いため、計算上の確率よりも高い頻度で帯の外に出ます。帯の外に出たことは「珍しい動き」のサインであって、「必ず戻る」という意味ではありません。

RSIが30以下になったら買っていいのですか?

それだけを根拠にするのは危険です。RSIは横ばい相場では機能しますが、下降トレンドの最中はRSIが30以下に張りついたまま株価が下がり続けることが珍しくありません。業績悪化が原因の下落なら、指標が売られすぎを示していても下げ止まる理由になりません。まずトレンドの方向と下落の理由を確認し、そのうえで補助的に使う指標だと考えてください。

テクニカル指標のパラメータは変えたほうがいいですか?

初心者は標準設定のまま使うのがおすすめです。RSIなら14、MACDなら12・26・9、ボリンジャーバンドなら20日・±2σ。過去のチャートに合うよう数値を調整すると当たったように見えますが、それは結果に合わせただけで将来も当たる保証はありません。標準設定は多くの市場参加者が見ている数字であり、それ自体がサインが機能する理由になっています。

このテーマをもっと深めるなら

おすすめ本の一覧では、 お金の基礎から株式投資・ファイナンス・経営戦略まで26冊をジャンル別に紹介しています。

あわせて読みたい