株とは? — 会社を細かく切り分けた「オーナー権」

会社を始めたり大きくしたりするには、たくさんのお金が必要です。工場を建てる、人を雇う、新商品を開発する。そこで会社は「お金を出してくれたら、会社のオーナー権を分けます」と出資者を募ります。この出資の証明書が株式(かぶしき)です。英語ではstock、あるいはshare(分け前)と呼びます。

ホールケーキを想像してください。会社という1つのケーキを何億ピースにも切り分けたのが株式で、1ピースでも持っていればあなたは立派なオーナーの一員。トヨタ自動車の株を100株持つことは、トヨタという巨大なケーキのひとかけらを所有することなのです。

ここが最初のいちばん大事なポイントです。株は「値段が上下するゲームのコマ」ではなく、会社の一部そのもの。だから株価は最終的に、その会社がどれだけ稼げるかに引っ張られます。この視点が持てると、ニュースの見え方も投資の判断もまるごと変わります。

株式会社は人類の大発明株式会社の起源は約400年前のオランダ東インド会社。船が沈むかもしれない大航海のリスクを、大勢で少しずつ分担する仕組みとして生まれました。「リスクを分け合って大きな挑戦を可能にする」——この発明の恩恵に、株主として乗るのが株式投資です。

株式の仕組み — お金と株はこうやって回っている

株式の仕組みは、2つの市場に分けて考えるとすっきりします。ひとつは会社が新しく株を発行して投資家からお金を集める場面(発行市場)。会社が証券取引所に新規上場するIPOがこれにあたり、集めたお金は工場や研究開発に使われます。

もうひとつが、すでに発行された株を投資家どうしで売買する場面(流通市場)です。あなたが証券アプリで株を買うとき、お金は会社ではなく「その株を売った別の投資家」に渡ります。会社に直接お金が入るわけではない——ここは意外と誤解されているところです。

この流通市場の舞台が証券取引所です。日本では東京証券取引所が中心で、プライム・スタンダード・グロースという3つの市場に約3,900社が上場しています。取引が成立するのは平日の9時から11時30分と12時30分から15時30分だけ。土日祝は市場が閉まります。

そして日本株の売買単位は100株(1単元)に統一されています。株価1,000円の会社なら10万円が最低ラインという計算です。ただし今は単元未満株のサービスで1株から買えるので、この壁は事実上なくなりました。

もうひとつ、株主にとって心強い仕組みが有限責任です。会社が倒産しても、株主が会社の借金を肩代わりすることはありません。最悪でも投資したお金がゼロになるだけで、それ以上を請求されることはない。この仕組みがあるから、個人でも安心して会社のオーナーになれます。

株と、ほかのおもな金融商品の違い
商品何を持っていることになるかリターンの源泉元本
株式会社のオーナー権の一部会社の利益(配当)と、その会社の評価の上昇(値上がり益)保証なし。会社が傾けば大きく減る
債券国や会社への貸付債権あらかじめ決まった利子満期まで持てば原則戻る(発行体が破綻しなければ)
投資信託複数の株や債券の詰め合わせの一部中身の株や債券のリターン保証なし。ただし分散されるぶん値動きは穏やか
預金銀行への預け金ごくわずかな利息1金融機関あたり1,000万円まで保護される

株主になると何がもらえる? — 4つの権利

オーナーには権利がついてきます。ケーキのひとかけらを持っているだけで、会社はあなたを株主として扱ってくれます。代表的なのは次の4つです。

配当金株主優待は「持っているだけでもらえる」もの、値上がり益は「売ってはじめて手に入る」もの。この違いを意識しておくと、自分がどういう投資をしたいのかがはっきりします。

株主の4つの権利
権利内容初心者にとっての意味
配当金会社が稼いだ利益の分け前を、持ち株数に応じて受け取る年1〜2回、銀行預金の利息のように振り込まれる。売らなくても受け取れる収入
議決権株主総会で経営方針や役員人事に票を投じる1単元(100株)につき1票。少額でも「意見を言える立場」になる
株主優待自社製品や割引券などの「おまけ」をもらう日本独特の制度。実施は会社の任意で、廃止されることもある
残余財産の分配会社が解散したとき、残った財産を分けてもらう実際に受け取れることはまれ。ただし「会社の財産の持ち主」であることの根拠
オーナー感覚を持つ練習よく行くコンビニや、よく遊ぶゲームの会社の株を1株買ってみてください。そのお店のニュースや新商品が、翌日から「自分の会社のこと」に変わります。この当事者感覚が、どんな入門書よりよく効く教材です。

株で利益が出る2つの道 — 値上がり益と配当金

株でお金が増える道は2つしかありません。ひとつは値上がり益(キャピタルゲイン)。買ったときより高く売れば、その差額が利益になります。もうひとつが配当金(インカムゲイン)。会社が利益の一部を株主に配るお金で、持っているだけで受け取れます。

たとえば株価2,000円の株を100株、20万円で買ったとします。1年後に株価が2,300円になって売れば、差額300円×100株で3万円の値上がり益。さらにその1年間に1株あたり60円の配当が出ていれば、6,000円の配当も受け取れます。合わせて3万6,000円、投資額に対して18%のリターンです。

ただしどちらの利益にも税金がかかります。税率は約20%(正確には20.315%)。3万6,000円の利益なら約7,300円が引かれ、手取りは約2万8,700円です。この税金を非課税にできるのがNISAで、だからこそ初心者はまずNISA口座から始めるのが定石になっています。

そして当然、逆もあります。株価が1,700円に下がったところで売れば3万円の損失。株の利益は「もらえるもの」ではなく「増えることも減ることもあるもの」だと最初に受け入れておくと、その後のつきあい方が楽になります。

1年のリターン = (売却価格 − 購入価格)× 株数 + 受け取った配当金
配当だけで考えると配当利回り3%の株を100万円ぶん持っていれば、年3万円の配当。税金を引くと手取りは約2万4,000円です。株価が動かなくてもこれだけは入ってくる、というのが配当の心強いところ。長期投資では、この積み重ねがリターンの半分近くを占めることもあります。

株価はなぜ毎日動くのか

株価は「買いたい人」と「売りたい人」の綱引きで決まります。買いたい人が多ければ値段は上がり、売りたい人が多ければ下がる。八百屋のトマトと同じで、需要と供給のバランスがすべてです。

そのバランスを動かす材料はいくらでもあります。会社の決算発表、新製品のニュース、金利の変化、為替、海外の株式市場、そして市場全体のムード。これらが1秒単位で織り込まれるので、株価は常に揺れ続けます。

ただし長い目で見れば、株価は会社の実力(稼ぐ力)に近づいていく、というのが投資の大原則です。「短期の株価は人気投票、長期の株価は実力測定」という有名な言葉があります。1日1日の値動きは人気投票の結果でしかなく、10年単位で見れば、利益を伸ばした会社の株価は上がり、伸ばせなかった会社は下がっています。

バリュー投資は、この性質を利用する考え方です。人気投票で不当に安くなった株を買い、実力測定に戻るのを待つ。そのときに使う道具がPERPBRといった指標で、「この株は稼ぐ力に対して安いのか」を測ってくれます。

値動きは1日で±30%まで1日に動ける値幅には制限(値幅制限)があり、上限まで上がることをストップ高、下限まで下がることをストップ安と呼びます。株価によって幅は違いますが、1日で数十%動くこともある世界です。生活費や近い将来に使うお金を株に入れてはいけない理由がここにあります。

株のリスク — 「元本保証がない」とはどういうことか

株式投資でいちばん最初に理解しておくべきことは、預けたお金が減る可能性があるという一点です。銀行預金のような元本保証はなく、買った株が半値になることも、上場廃止で価値がほぼゼロになることもあります。

とはいえ、恐れすぎる必要もありません。株のリスクは、やり方でかなりコントロールできます。1社に全額を突っ込まず10社に分ける、一度に買わず毎月少しずつ買う、そして5年10年という時間軸を持つ。この3つで、リスクの体感はまったく違うものになります。

実際、世界の株式全体に分散して20年持ち続けた場合、過去のデータではマイナスで終わった期間はほとんどありませんでした。短期では大きく振れるけれど、長期では経済成長とともに右肩上がり——これが株式という資産の基本的な性格です。

逆に絶対にやってはいけないのが、生活費や3年以内に使う予定のお金を株に入れることです。相場が下がったときに現金が必要になれば、いちばん安いところで売らざるを得なくなります。株に回すのは「当面使う予定のない余裕資金」だけ。この一行を守るだけで、大失敗の確率は大きく下がります。

借りたお金で投資しない信用取引を使えば、手元資金の何倍もの金額を売買できます。うまくいけば利益も何倍ですが、失敗すれば投資額以上の損失を負い、追加のお金を求められることもあります。初心者が最初に触るものではありません。現物取引だけを使っている限り、損失は投資した金額までです。

株の始め方 — 初心者の3ステップ

仕組みがわかったら、あとは実際に触ってみるのがいちばんの近道です。難しく考えず、次の3ステップで進めてください。

口座開設から最初の1株まで、実質1週間もあれば終わります。1万円ぶんの株を持って過ごす1か月は、入門書を10冊読むより多くのことを教えてくれます。

はじめての3ステップ
  • ① ネット証券に口座を開く: スマホとマイナンバーカードがあれば10分で申し込めます。口座の種類は「特定口座(源泉徴収あり)」、NISA口座も同時に申し込んでおきましょう。
  • ② 少額を入金して、単元未満株を1株買う: 知っている会社、好きな会社で構いません。まずは注文から約定までの流れを体験することが目的です。金額は失っても平気な範囲で。
  • ③ 決算とPERを見てみる: 持ってみると、その会社のニュースが自然に目に入ります。次の決算発表で売上と利益を確認し、PERやPBRで割高・割安を見る。ここまで来れば、もう立派な投資家です。

まとめ

株式は会社のオーナー権の一部で、株主には配当金・議決権・株主優待、そして値上がり益のチャンスがあります。仕組みとしては、会社が資金を集めるために発行した株を、投資家どうしが証券取引所で売買している——これがすべてです。

株価は短期では人気投票、長期では実力測定。だから短い値動きに一喜一憂せず、その会社が稼ぐ力を伸ばしているかを見ることが、いちばん確かな判断基準になります。

元本保証はありませんが、分散・積立・長期の3つでリスクは大きく和らげられます。「数字の売買」ではなく「会社のオーナーになる」——この感覚を持って、まずは知っている会社の株を1株買ってみてください。そこから見える景色が、投資家としての第一歩です。

よくある質問

株とは何ですか?わかりやすく教えてください。

株とは、会社のオーナー権を細かく切り分けたものです。会社は事業に必要なお金を集めるために株式を発行し、それを買った人が株主(オーナーの一員)になります。株主は会社の利益の分け前として配当金を受け取ったり、株主総会で議決権を行使したりできます。ケーキを何億ピースにも切り分け、その1ピースを持つイメージが近いです。

株を買うと、そのお金は会社に入るのですか?

証券取引所で買った場合、お金は会社ではなく株を売った別の投資家に渡ります。会社に直接お金が入るのは、新規上場(IPO)や増資のように会社が新しく株を発行する場面だけです。ただし株価が高く保たれることは、会社が将来資金を調達しやすくなることを意味するため、流通市場での売買にも意味があります。

株はいくらから買えますか?

単元未満株のサービスを使えば数百円から買えます。日本株の売買単位は通常100株なので、株価1,000円の会社なら10万円が必要ですが、SBI証券のS株や楽天証券のかぶミニなどを使えば1株から購入できます。配当も持ち株数に応じて受け取れます。ただし議決権や株主優待は原則100株以上が条件です。

株で利益が出るのはどういうときですか?

利益の出方は2つあります。ひとつは値上がり益で、買ったときより高い値段で売れば差額が利益になります。もうひとつは配当金で、会社が利益の一部を株主に配るお金を年1〜2回受け取れます。どちらの利益にも約20%(20.315%)の税金がかかりますが、NISA口座で買った株ならこの税金がかかりません。

株の取引時間はいつですか?

東京証券取引所の取引時間は平日の9時から11時30分(前場)と、12時30分から15時30分(後場)です。土日と祝日、年末年始は市場が閉まっています。注文の入力自体は証券アプリから24時間できますが、実際に売買が成立するのは取引時間中だけで、時間外に出した注文は翌営業日の取引開始時に処理されます。

会社が倒産したら、株主は借金を背負いますか?

背負いません。株主の責任は出資した金額までに限られており(有限責任)、会社の借金を肩代わりする義務はありません。ただし投資したお金は戻ってこない可能性が高く、上場廃止になれば株の価値はほぼゼロになります。損失は投資額までに限られる、というのが現物取引の大原則です。

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